1995 Fiscal Year Annual Research Report
建築環境システムのエクセルギー・エントロピー過程に関する基礎的研究
Project/Area Number |
06650663
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Research Institution | Musashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
宿谷 昌則 武蔵工業大学, 工学部, 教授 (20179021)
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Keywords | 建築環境システム / エクセルギー / エントロピー / 蒸発冷却 / 屋根散水 |
Research Abstract |
建築環境システムのような熱現象を伴うシステムの評価は、エネルギーの保存則とエントロピー増大則を両立させて行うべきとの認識に基づき、建築の室内環境調整、即ち暖冷房・照明に関わる様々なシステムにおけるエクセルギーの投入・消費、エントロピーの生成・廃棄の一連の過程(エクセルギー・エントロピー過程)を数値モデル化することを目的として研究を行なった。本年度は、昨年度の研究において進展が見られた建築に関わる現象の一つである水の蒸発についての基礎的理論の整理を行ない、更に蒸発を利用した自然冷房技術のひとつである屋敷散水のエクセルギー・エントロピー過程を明らかにした。以下に得られた結果をまとめると、 1)建築の周囲の湿り空気を環境と捉えた場合、環境と異なる温湿度の湿り空気は、温または冷エクセルギーと湿または乾エクセルギーとをもち、液体水は温または冷エクセルギーとをもつことを示した。 2)蒸発作用に伴って行なわれる冷却という仕事は、液体水のもつ湿エクセルギーの一部が消費され、生産される冷エクセルギーを消費して行なわれるものであることがわかった。 3)屋根散水が行なわれている外壁面では、温度上昇に寄与するはずの日射エクセルギーが、非散水の外壁面に比べて積極的に消費された結果として、室内に流入する温エクセルギーが小さくなる。即ち、建築での日射エクセルギーの消費の道筋を制御する技術であることがわかった。また、散水により外壁面で日射エクセルギーを消費した結果生成されるエントロピーは、地球の水循環(蒸発・降水)に上手に乗せられれば、適度にかつ定常的に廃棄し続けられるのではないかと考えられる。
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