1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06650711
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
西垣 安比呂 広島工業大学, 環境学部, 助教授 (10208168)
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Keywords | 明恵上人 / 高山寺 / 臨終 / 住まい |
Research Abstract |
明恵上人が高山寺に営んだ一連の庵室群についての調査研究を継続して行なっている。これまでに羅婆坊跡、花宮殿跡、縄床樹跡についてはそれぞれの位置を特定し、羅婆坊跡、花宮殿跡については実測図を作成した。今年度にはいってこれらについての追加調査を行うとともに遺跡窟跡の位置を特定し、その実測図を作成することができた。三加禅や禅堂院については跡地は比定されているが、建物が立っていたと考えられる敷地は保存されていない。それ故、以上の調査によって、明恵上人が高山寺に営んだ庵室群のうち建保三(1215)年栂尾西峯に建てられた練若台(高山寺における明恵上人の最初の庵室)を除いて全て実施調査をおえたことになる。練若台については残念ながら位置の特定に難航しており、もちろん実測調査を行っていない。今後の課題としてのこされている。 一方、文献研究については「高山寺明恵上人行状」を精読し、そこに記載されている寛喜三年造作の「臨終ノ道場」が仁和寺所蔵の「梅尾禅堂院御庵室差図」に描かれた庵室であることを明らかにした。このことによって明恵上人臨終前後におこなわれた儀礼等について建物平面と照合しながら考察することが可能となり、「梅尾禅堂院御庵室差図」についても新しい解釈を示すことができた。また、「梅尾禅堂院御庵室差図」の書き込み「弥勒帳」「土室」についても当時の文献、指図に類例のあることが明らかとなった。これら基礎的資料が整いつつあり、ここで得られた知見によって明恵臨終の道場をめぐって、その建築的場所の意味について解明をこおないうる段階に至っている。また、文献研究についてはさらに、中世の「池亭記」「方丈記」あるいは近世の石川丈山、田能村竹田、頼山陽などののこした文献に関して本研究との関連事項の調査読解をすすめている。
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