1994 Fiscal Year Annual Research Report
有機薄膜のモルフォロジーと薄膜作製時に発生する膜内対流構造との相関
Project/Area Number |
06650849
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塚田 隆夫 東北大学, 反応化学研究所, 助教授 (10171969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝沢 光紀 東北大学, 反応化学研究所, 教授 (70005338)
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Keywords | 有機薄膜 / 回転塗布法 / マランゴニ効果 / 対流 |
Research Abstract |
キャスト法あるいは回転塗布法といったウエットプロセスによる有機(高分子)薄膜作製法では、揮発性の溶媒に溶かした薄膜材料を、基板に塗布し、溶媒を自然にあるいは回転乾燥することにより薄膜化を行う。これら乾燥プロセスの際には、液膜内に急峻な温度勾配あるいは濃度勾配が発生し、条件によっては、マラカゴニ効果に基ずく不安定性により対流が発生する可能性があり、有機薄膜形成過程が非常に速い場合、膜内に発生したこの対流の空間構造が凍結され、薄膜のモルフォロジーに影響を与える可能性がある。本研究では、有機薄膜作製時におけるマランゴニ不安定に基づく対流の発生の可能性を探究すべく、高分子溶液の表面張力測定、線形安定性理論による検討を行うと共に、実際に回転塗布法による有機薄膜の作製を試みた。 高分子溶液の表面張力を測定するに当たり、滴重法に基づく測定装置を自作した。なお、装置は温度制御(25℃)に加え、高分子溶液が揮発性であることから、周囲雰囲気が飽和蒸気圧に維持さけるよう制御した。対象とした高分子溶液は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)のモノクロロベンゼン溶液である。測定の結果、PMMA濃度(C=0〜10wt%)の増加に伴い、表面張力(σ)は減少する(dσ/dC<0)傾向を示した。この関係を線形安定性理論に適用すると、本系はマランゴニ的には安定な糸となる。従って、PMMA-モノクロロベンゼン系においては、マランゴニ不安定に基づく対流の発生の可能性が無いことが分かった。これを確認するために、現在回転塗布法により実際に薄膜作製を試みている。 しかし、回転塗布法による有機薄膜の作製時に、基板の回転数が小さい場合、凹凸の表面を有する薄膜が形成されると報告があり、上記機構以外の膜内対流によることも考えられ、様々な系に関して今後実験及び理論の両側面から更に検討を行う必要があると考えている。
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