1995 Fiscal Year Annual Research Report
光励起ヒドリド錯体種による太陽エネルギーの化学的変換
Project/Area Number |
06650954
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大西 正義 長崎大学, 工学部, 助教授 (00039695)
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Keywords | 液相脱水素反応 / ヒドリド錯体 / 光触媒 / ホスホニト / コバルト / 2-プロパノール |
Research Abstract |
多くの錯体触媒反応で、M-H結合をもつ活性な遷移金属ヒドリド錯体中間種が重要な役割を果たしている。本研究では、中心金属イオンが18電子の希ガス配置構造で安定化され、合成と取り扱いの容易な安定遷移金属ヒドリド錯体の合成、光化学の研究ならびに触媒反応への応用を行う。触媒反応としては、2-プロパノールの脱水素触媒反応に注目する。「液相」反応条件下では、発生した水素ガスが容易に2-プロパノールから分離されるので、分離に伴うエントロピー項TΔSの増大により、反応全体の自由エネルギー変化ΔGが負になり、「液相」脱水素反応は自主的に進行する。この反応は吸熱過程(ΔH>0)なので、触媒反応サイクルがまわる間、反応熱を吸い上げ、反応媒質の熱エネルギーを化学エネルギーに変換貯蔵できる。 (1)d^8金属5配位型のコバルト(I)錯体[CoH{PPh(OEt)_2}_4]にパイレックス通過光を照射すると、1個のホスホニトPPh(OEt)_2が遊離し、配位不飽和ヒドリド錯体種“CoH{PPh(OEt)_2}_3"が発生した。2-プロパノール「液相」脱水素触媒反応は、82℃で“photoassisted"に進行し、そのターンオーバー数は4.6/時であった。 (2)d^6金属6配位型の新規ルテニウム(II)錯体[RuH(BRpz_3){PPh(OEt)_2}_2](Pz=1-ピラゾリル基)と[RuClH(cod)(R-biox)](cod=1,5-シクロオクタジエン;R-biox=4,4′-二置換-2,2′-ビオキサゾリン)の合成と性質の検討を行った。前者の錯体に光を照射すると、1個のホスホニトPPh(OEt)_2が脱離し、16電子の配位不飽和種“RuH(BRpz_3)-{PPh(OEt)_2}"の発生が確認された。
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