1994 Fiscal Year Annual Research Report
含フッ素オレフィンからのメタラサイクル化合物の合成と反応
Project/Area Number |
06650974
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
久保田 俊夫 茨城大学, 工学部, 講師 (40143143)
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Keywords | フルオロオレフィン / メタラサイクル / 含フッ素カルボン酸 / 挿入反応 |
Research Abstract |
本研究は全体を三段階に分けて検討を行ったが,その第一目標はフッ素原子を置換基として持つメタラサイクルの合成である。原料オレフィンとしてトリフルオロプロペンおよびフッ化ビニリデンを用いてメタラサイクル合成を検討したところ,いずれの場合も対応するニッケラサイクル(1,2)がそれぞれ収率56%および44%得られた。1,2は結晶性の良い個体で再結晶が可能な程度の不安定性を持っていた。また,当初から興味の対象であった位置選択性についてもトリフルオロメチル基あるいはフッ素がカルボニルα位のみに挿入されることが判明した。以上から第一目標は達成したことになる。 第二段階として,ニッケラサイクル1,2への各種オレフィンの挿入反応を検討した。その結果,スチレンおよび1-ペンテンを用いた場合には速やかに挿入反応が進行し,反応後処理の後に対応する含フッ素カルボン酸がいずれも70%以上の収率で得られた。しかし,アクリロニトリルおよびアクリル酸を用いた場合には,目的の含フッ素カルボン酸の収率は30%以下であり,導入オレフィンの置換基が電子供与性の場合には,挿入反応が進行しやすく,電子求引性の場合には阻害される傾向にあることが見いだされた。現在,以上の第一および第二段階の成果を報文にまとめて投稿中である。 第三段階に計画したキラルイミン配位子を用いる光学活性メタラサイクルの合成は用いたキラルイミン配位子の安定性が低く,得られたメタラサイクルも不安定で単離段階で分解してしまうため,単離には至らなかった。しかし,今後イミン構造を持つ光学活性saleneを利用して目的の達成を目指している。
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