1994 Fiscal Year Annual Research Report
新しい二重蛍光現象を利用した微視的粘度・圧力センサー開発
Project/Area Number |
06650990
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 佳久 大阪大学, 工学部, 教授 (30112543)
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Keywords | 光化学 / 二重蛍光 / 粘度効果 / 芳香族エステル / 圧力効果 |
Research Abstract |
新規ベンゼンヘキサカルボン酸エステル誘導体のエステル残基間の立体障害により誘起される二重蛍光現象を利用して、微視的粘度ならびに圧力を定量的に測定出来るプローブ分子を開発することを目的として、各種センサー分子の合成と蛍光特性の測定を行い、以下の成果を得た。 1.予備研究の成果を基に分子設計を行い、まずベンゼンヘキサカルボン酸エステルのエステル残基を立体的によりかさ高くしたものを多数合成した。 2.典型的な二重蛍光分子であるベンゼンヘキサカルボン酸tert-ブチルエステルと対照分子としてメチルエステルのX線結晶構造解析を行い、前者でのみ二重蛍光が発現する理由がこの分子の基底状態におけるカルボニル基とベンゼン環の大きな二面角によることを明らかにした。 3.それらの化合物の二重蛍光挙動を蛍光分光光度計、ナノ・ピコ秒蛍光寿命測定装置および偏光解消測定装置を用いて測定し、その結果を解析することにより、この特異な二重蛍光現象の詳細な発現機構を明らかにした。 4.ベンゼンヘキサカルボン酸tert-ブチルおよびメンチルを用いて、様々な粘度を持つ各種溶媒中で温度(+25〜-125℃)および圧力(1〜3500気圧)を変えて二重蛍光を測定し、粘度および圧力との定量的な関係を求めるとともに、上で述べた二重蛍光の発現機構を支持するデータを得た。 5.このようにして求めた粘度と二重蛍光ピークの相対強度との関係式を用いて、実際に代表的な分子集合系であるSDSミセルの微視的粘度の測定を行った。 6.同様に、上記4で求めた求めた圧力と二重蛍光ピークの相対強度との関係式を用いて、実際に各種溶媒中における二重蛍光強度比の測定を行った。 粘度との相関はかなり明らかになったので、今後、各種溶媒中における圧力効果についてさらに詳細な検討を行い、実用可能な微視的粘度・圧力プローブとなるセンサー分子の開発を行う予定である。
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[Publications] M.Yasuda,G.Kuwamura,T.Nakazono,K.Shima,Y.Inoue,N.Yamasaki and A.Tai: "Highly Twisted tert-Butoxycarbonyl Groups in Benzenepolycarboxylate.The Origin of Steric Hindrance-Induced Dual Flurescence" Bull.Chem.Soc.Jpn.67. 505-510 (1994)
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[Publications] 井上佳久: "不斉反応におけるエントロピーの役割-温度による生成物キラリティーの逆転" 生産と技術. 46. 43-46 (1994)
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[Publications] A.Tai,T.Kikukawa,T.Sugimura,Y.Inoue,S.Abe,T.Osawa and T.Harada: "An Improved Asymmetrically-Modified Nickel Catalyst Prepared from Ultrasonicated Raney Nickel" Bull.Chem.Soc.Jpn.67. 2473-2477 (1994)
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[Publications] 井上佳久: "光増感反応で不斉合成に迫る" 有機合成化学協会誌. 53(5月号). (1995)
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[Publications] Y.Inoue,H.Tsuneishi,T.Hakushi,and A.Tai(分担執筆): "“Photochemical Key Steps in Organic Synthesis"(edited by J.Mattay and A.G.Griesbeck)" VCH Verlag(Weinheim,Germany), 350 (1994)
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[Publications] 井上佳久(分担執筆): "光と化学の事典(本多健一、飛田光満彦編)" 丸善, 600 (1996)