1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660013
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
村田 孝雄 岩手大学, 農学部, 教授 (70241487)
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Keywords | 光合成産物代謝 / 冷害抵抗性 / 基肥窒素無肥 / 面積当たり籾数 / 無効茎 / 中位分げつ / ショ糖リン酸合成酵素 / 登熟期後期の転流 |
Research Abstract |
1993年度の水稲冷害において基肥窒素少肥などの肥培管理によって被害を最小限に止め得た事例が多かった。本研究では窒素施肥法の違いと冷害抵抗性の関係を明らかにする。1993年冷害で、あきたこまち(AKI)が著しい被害を受けたのに対し、ひとめぼれ(HIT)は耐冷性であったので両品種を供試して基肥窒素無施用(-BN)の影響について検討し、次の結果を得た。 1.両品種とも-BN区は標準区に比べて初期生育が遅れ、窒素追肥によっても生育の遅れ及び体内窒素含有率とも回復せず、籾数が不十分となって約10%の減収となった。-BN区では下位分げつが抑制されたため、分げつ数及び無効茎が少なく、有効茎は下位及び2次分げつが少なく中位分げつから構成されていた。-BN区での籾数不足の原因は、AKIでは穂数不足、HITでは1穂当たり籾数不足と品種間差がみられた。しかし、穂揃え期までのT/R比は対照区に比べて小さく相対的に根の生育が大きかった。 2.減数分裂期に自然光下で低温処理を行ったところ、1穂籾数が減少したが冷害の典型である障害不稔の発生は少なかった。これは実験年が例年にない強日射に恵まれたためと考えられ、このことからも冷害は単なる温度障害ではなく少日射の影響が極めて大きいことが推定される。 3.止葉の炭水化物の日変化を調べた結果、水稲葉身における光合成産物の一次的貯蔵及び転流はデンプンではなくショ糖を中心に進行することが明らかになった。また、葉身のショ糖代謝の鍵をにぎるショ糖リン酸合成酵素の活性は両品種及び窒素施肥法による差異がなく、登熟の進行にともない低下した。登熟後半の茎葉における光合成産物の再蓄積と酵素活性の低下との間に関係があるか否かは今後の課題である。 4.以上の結果、-BN栽培が正常年において減収する原因は籾数不足にあり、その要因は品種で異なることが明らかになった。また、多収の観点から登熟後期の光合成産物の転流が重要であることが分かった。
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