Research Abstract |
平成7年度の研究計画では,1)岩手県(県北地域),宮城県(県南地域),そして山形県の農業試験研究機関および農業団体などを通して,シロアズキの栽培地分布の概況を把握し(事前調査),2)分布の可能性の高い現地において聞き取りと種子の収集を行い(現地調査),さらに,3)保存中(前年までに収集済)の種子を用いて,生育・収量特性の比較や種子の増殖を行うために圃場試験を実施することを目的とした. その結果,1)アズキ(特に赤色を除く)在来品種の消失はきわめて急速に進んでおり,かつての栽培状況に関する情報を得ることも困難な状況である.その傾向は,宮城県,山形県で強く,宮城県については年度末に種苗店や市場での聞き取りをもう一度実施する予定である.岩手県の三陸地方で,今回はじめて2カ所から収集できた.2)聞き取り調査は,農家(宮城県南・岩手三陸),種苗店(岩手三陸・宮城県南・山形庄内・福島市)を中心に行った.昭和40年代から分布消滅が著しいことは共通しているが,栽培されない理由として,需要やニーズが小さくなったことよりも,草型や生態型のバラツキ,さらに成熟期の個体間・個体内の斉一性の低さ,また,労働力不足に加えて「作りにくさ」「手間がかかる」など,品種化の遅れがこの作物の消滅に拍車をかけていることが示唆された.ところで,各地の朝市や魚菜市場で古くから商いをしている年輩の女性(決して男性ではない)からは,高い確率で情報が得られ,今後の調査を進めるうえで示唆的であった.3)保存種子を用いた生育・収量調査結果の分析は目下継続中であるが,(1)生育相(栄養・生殖成長の諸相)は系統間変異がきわめて大きく,変異は主として栄養成長にかかわる形質に依存していた.(2)多収系統は粒数依存の傾向が強いが,それらが必ずしも多節・多分枝系統とはいえず,品種化されたマメ類との違いを解析中である.(3)熟期の斉一性と栄養・生殖成長との併進性とのかかわりは明白であるが,このことと生態型との関係においては,必ずしも(これまでの結果のように)開花迄日数と併進期間の長さとの間には有意な相関がみられず,サンプルの在来地域拡大とともに再検討が必要になったと考えている.
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