1994 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科作物の根における傾斜重力屈性の発現機構に関する研究
Project/Area Number |
06660016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中元 朋実 東京大学, 農学部, 助手 (50180419)
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Keywords | 重力屈性 / 根 |
Research Abstract |
トウモロコシの種子根は,出根直後には負の重力屈性反応を示し,その後正の重力屈性反応を示す.この特異な生長運動が,傾斜重力屈性の発現に果たす役割は小さくなく,そのメカニズムの解明を試みた. 土壌温度と水ポテンシャルの影響を調べるために,土壌温度32,25,18℃および土壌水ポテンシャル-5,-38,-67kPaの条件下にトウモロコシを栽培し,土壌中の種子根の軌跡から伸長方向の変化を調査した.負の重力屈性反応は,出根直後から根が約10cmに達するまでみられたが,高温条件下で抑制された.水ポテンシャルは出根時に影響を与え,種子根は低ポテンシャルの下でより下向きに出現した.種子根の伸長方向の変化を,時間とともに減少する負の重力屈性反応と根が最終的にとる伸長角度(liminal angle)へむけての正の重力屈性反応の和と仮定したところ,モデルはデータによく適合した.負の重力屈性に係わるパラメータを検討することにより,高温や低い水ポテンシャルによって初期の負の重力屈性の消失が早まることが明らかになった。 以上により,トウモロコシ種子根の初期生長には,生理的に異なった2種の生長運動が関与していることが明らかになった.すなわち,正の重力屈性反応は現在の伸長角度とliminal angleとのずれを感受する過程を含む反応であるのに対して,負の重力屈性反応はこの感受機構をともなわず,主として発生の段階あるいは時間経過によって規定されるものであることが示唆された.
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