1994 Fiscal Year Annual Research Report
ラットおよびヒト表皮型ペプチジルアルギニンデイミナーゼの構造と生理機能の解明
Project/Area Number |
06660089
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
高原 英成 茨城大学, 農学部, 助教授 (30122063)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 暁 防衛医科大学校, 医学部, 講師
|
Keywords | ペプチジルアルギニンデイミナーゼ / ラット表皮 / ヒト正常培養表皮細胞 / cDNA クローニング / RT-PCR法 / 5'RACE法 / 3'RACE法 |
Research Abstract |
タンパク質中のアルギニン残基をCa2^+依存的に脱イミノ化しシトルリン残基に変換するPeptridylarginine deiminase(PAD)には3つのアイソフォームtypeI.II.IIIが存在する。表皮にのみ存在するtypeIIIについては、材料の調製が困難なこともあり殆ど研究が行われていない。本研究では、typeIIIの酵素化学的性質、生理機能、ならびに発現制御機構を解明するうえで極めて重要なステップである。cDNAのクローニングを試みた。精製ラット表皮由来PAD typeIIIの内部アミノ酸配列情報に基づきRT-PCR法、ついで5'RACE法ならびに3'RACE法を組み合わせ解析をすすめた結果、全長3096bpのほぼ完全長と思われるラットPAD typeIIIcDNAのクローニングに成功した。本cDNAは、42bpの5'非翻訳領域と664アミノ酸残基をコードする1995bpの翻訳領域と1059bpの3'非翻訳領域からなり、3'非翻訳領域内の3081番目にはAATAAAのポリA付加シグナルが存在し、その11番目後の3096からポリAが付加すると判断できた。ラットPAD typeIIIは664アミノ酸残基からなる分子量75,036Da、計算上の等電点5.13の弱酸性タンパク質であった。ラットPAD typeIIに対する相同性は、アミノ酸レベルで50.8%、DNAレベルで62.1%であり、特にC末端側の配列での高い相同性が特徴的であった。また、活性発現への関与が示唆される2つのヒスチジン残基および1つのシステイン残基は、typeIIIにおいても保存されていた。ついで、ヒト正常培養表皮細胞を用いヒトPAD typeIIIについてもそのcDNAのクローニングを試みた。本研究で明らかにしたラットPAD typeIIIの特徴的なアミノ酸配列の塩基配列情報によりヒトPAD typeIIIcDNAをRT-PCR法によりクローニングした。その結果、ヒトPAD typeIIIcDNAについても全長の約60%の領域のクローニングを行うことができた。さらに、現在残りの領域についても解析を進めている。このように、本研究ではこれまで困難とされてきた、表皮型PADのcDNAを世界で初めてクローニングをすることに成功することができたことから、同酵素に関する研究は今後大いに進展できるものと確信している。
|