1995 Fiscal Year Annual Research Report
合成酵素の分子進化を利用した新規生理活性天然物の探索方法の開発
Project/Area Number |
06660134
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西岡 孝明 京都大学, 化学研究所, 助教授 (80026559)
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Keywords | 生理活性天然物 / 代謝 / 代謝経路 / 酵素反応 / データベース / 分子進化 |
Research Abstract |
生理活性天然物の探索はそれを生産しているとおぼしき生物を大量に集めて、抽出、単離、同定することによっておこなわれてきた。このようなランダムスクリーニングによる探索は、新しい化合物を見つける効率が極めて悪いうえに貴重な天然資源の消失を招くことも危惧されている。むしろ、生物体内に存在している可能なすべての代謝経路をあらかじめ推定しておくことができれば、それらの合成経路からどのような代謝物質(生理活性天然物)が生産されうるのかをあらかじめ予想できるはずである。本研究課題では、合成酵素の分子進化を利用してこれまでに知られていない新しい代謝経路を予想することを目的として研究をおこなった。まず、4987個の代謝物質それぞれについて、その合成や分解に関与している酵素を調べあげた。例えば、L-グルタミン酸では87種類の合成および分解酵素が関与していることがわかった。また、これら87種類の酵素が触媒する化学反応や補酵素、阻害剤などに関するデータは、これまで本申請者が作成してきた LIGAND酵素反応データベースとリンクすることによって容易に参照することができる。また、このデータベースを介して代謝経路マップともリンクすることによって、その代謝物質がある生物種においてどのような物質代謝に関与しているのかもただちに調べることができる。次に、代謝物質と酵素との関係を利用して可能な代謝経路を推定することを試みた。実際の生物における代謝は極めて限られた数の代謝経路しか利用していないにもかかわらず、推定された代謝経路は天文学的な数になってしまった。この問題点を解決するためには、実際に存在している経路を優先的にたどるようなアルゴリズムを開発しなければならないことがわかった。また、これまでに知られていない新しい代謝物質を推定することができなかった。これは、本来の基質でない化合物を与えられた時に生成物を予測するような、反応タイプデータを与えることによって解決できるであろう。このような問題点があるものの、本課題研究によって、ある1群の酵素蛋白質が与えられた時、それらの組み合わせから代謝経路を推定することができるようになった。近い将来ある生物種についてゲノムDNAの全塩基配列が決定されると、その個体が有している全ての酵素蛋白質がわかるはずである。それらの酵素の組み合わせから代謝経路や、未知の代謝産物を推定することが可能になるものと期待される。
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[Publications] T. Hara: "Site-directed Mutagenesis of Glutathione Synthetase from Escherichia Coli B: Mapping of the γ-L-glutamyl-L-systeine-binding site" Protein Engineering. 8. 711-716 (1995)
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[Publications] M. Suyama: "Searching for Common Sequence Patterns among Distantly Related Proteins" Protein Engineering. 8. 印刷中 (1995)
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[Publications] T. Nishioka: "LIGAND Chemical Database for Enzymatic Reactions: A Link between Enzyme Structures and Chemical Reactions." Proc. Genome Informatics Workshop. 6. 138-139 (1995)
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[Publications] T. Hibi: "Affinity Labeling as a Tool for Fixing the Flexible, Multifunctional Loops in the Nonclassical ATP-Binding Fold of Glutathione Synthetase" Nature Struct. Biol.3. 16-18 (1996)
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[Publications] T. Nishioka: "Drug design based on the amino acid sequence similarity of target proteins “QSAR and drug design. New developments and applications"" Pharmacochemistry Library 23, ed. by T. Fujita, Elsevier, N. Y, 349(215-233) (1995)