1995 Fiscal Year Annual Research Report
n-bおよびn-3系高度不飽和脂肪酸の栄養生理機能の定量的解析
Project/Area Number |
06660161
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
池田 郁男 九州大学, 農学部, 助教授 (40136544)
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Keywords | ドコサヘキサエン酸 / エイコサペンタエン酸 / α-リノレン酸 / リノール酸 / 脂肪酸合成酵素 / トリグリセリド / n-3系多価不飽和脂肪酸 / n-6系多価不飽和脂肪酸 |
Research Abstract |
これまでの研究でn-3系多価不飽和脂肪酸とくにエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)は肝臓および血清トリグリセリド濃度を顕著に低下させることが示された。そこで、その機構を解明するため、肝臓でのトリグリセリド合成に関与する酵素の活性をラットを用いて測定した。EPAあるいはDHAの摂取ではリノール酸を摂取した場合に比べ、脂肪酸合成酵素(FAS)およびトリグリセリド合成の律速酵素であるホスファチジン酸ホスホハイドロラーゼ(PAP)の活性の有意な低下が認められた。α-リノレン酸の摂取でも低下が認められたが、EPAやDHAほど強い作用ではなかった。また、脂肪酸合成系にNADPHを供給するリンゴ酸酵素およびグルコース6ーリン酸脱水素酵素の活性もEPA、DHAの摂取により低下した。一方、脂肪酸β-酸化の指標であるカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ活性はEPAの摂取により増加した。トリトンWR1339をラットに注入し、肝臓からのトリグリセリドの放出速度を測定したところ、EPAあるいはDHAの摂取により、有意な低下が観察された。いずれの場合でも、EPAとDHAの間には大きな違いは観察されなかった。これらの結果は、EPAやDHAの摂取は、肝臓FASおよびPAPの活性を低下させ、結果的に肝臓トリグリセリド濃度の減少を導くことを示している。肝臓トログリセリド濃度の減少は、肝臓での極低密度リポタンパク質の合成およびその血中への放出を抑制し、血清のトリグリセリド濃度を低下させると考えられた。高トリグリセリド血症は動脈硬化症発症の危険因子として知られており、その食事による改善は緊急の課題である。本研究の結果はEPAとDHAのこの疾病への応用に大きく貢献すると考えられる。
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