1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660183
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川邊 洋 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (80126036)
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Keywords | 火山災害 / 大規模崩壊 / 熱水系 / 自然電位 / 電気伝導率 / 同位体分析 / 間隙流体圧 |
Research Abstract |
火山体での大規模崩壊のメカニズムを、とくに火山体内での熱水や噴気の動きとの関連から解明することを目的として、雲仙・眉山で種々の観測を実施した。自然電位の広域的観測:広域的な熱水流動の把握のため、眉山周辺で自然電位の測定を行った。(1)島原温泉区域の中でも高温相である元池泉源を含む地区は、低電位部になっている。このような低電位部では、測線と交わる方向での熱水の流動が想定される。(2)眉山山麓の測線上でも、電位が極めて低い区間が2つ見られ、そこを通り(1)の区域へと通ずる熱水のルートが想定された。湧水の電気伝導率の測定:島原市内の14ケ所の湧水で、電気伝導率と水温を測定した。伝導率の最高値は元池泉源の197.5mS/m(30.5℃)、最低値は眉山中腹の湧水の11.1mS/m(15.5℃)であり、両者の間に分布する測定値は、自然電位による区域分けに非常に良く対応していた。安定同位体比の測定:元池泉源にどの程度の火山起源の熱水が含まれているのかを調べるため、酸素と水素の安定同位体比を測定した。試料は、元池泉源と明きらかに天水である眉山中腹の湧水を含め、計7ケ所から採水した。分析の結果、すべての試料がほとんど天水線上に乗り、火山起源の熱水の混入は認められなかった。このことは、たとえ熱水が混入していたとしても、同位体比にほとんど影響を及ぼさないほど少量であることを示している。しかし、電気伝導率と水温には顕著な差が見られるので、この少量の熱水はかなりの高伝導性を有していると思われる。自然電位の連続観測:自然電位の変化から熱水の挙動を監視するために、上記熱水ルートの延長上の眉山中腹で、自然電位の連続観測を行っている。熱水を考慮した山体崩壊の力学的解析:自然電位を界面動電現象による流動電位とみなして、流動する熱水の水圧を理論的に見積もることができる。これらの因子を具体的な安定解析法に組み込むのは、今後の課題としたい。
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