1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660192
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
矢幡 久 九州大学, 熱帯農学研究センター, 教授 (90038290)
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Keywords | 耐塩性 / 緑化樹木 / Na蓄積植物 / Na-Kイオン交換 |
Research Abstract |
本研究は、木部組織の柔細胞がイオンポンプによって通水中の塩を吸収し、葉への塩を蓄積を抑制する機能について解析し、これにより個体全体の耐塩性の違いを評価するととも、耐塩性の生理的なメカニズムを解明することを目的とした。耐塩性が異なると推測される6樹種1年生苗についてNaCl (0、13、25、50、100mM溶液)を50日間潅水処理し、最後に根(細根、太根)、葉、幹、枝に分け、Na、K、Ca、Mgイオンの濃度を原子吸光分析法により、また、陰イオンは、イオンカラムクロマト法により、Cl、F、SO_4、PO_4について分析した。処理濃度の増大に伴う個体当たりの各イオン吸収量は、KについてはタイワンヤマツツジとモッコクではKの吸収量が減少したが、シラカシとマテバシイは明らかに増加する傾向を示した。Ca吸収に及ぼす影響は、低濃度において吸収量が増大し、さらに処理濃度の増大も伴い減少した。Mg吸収は、いずれの樹種も濃度処理間に大差がなかった。陰イオンでは、FとSO_4とPO_4の吸収は、低処理濃度で一旦低下し、処理濃度が増加すると再び増加した。ただし、シラカシのPO_4の吸収は逆の傾向を示した。6樹種の葉を除く3器官すべてを通して、Naの増加率とKの減少率が同一回帰線で示された。これは、柔細胞がNaイオンポンプをもち、この働きで柔細胞にNaが取り込まれ、そのアンチポート(antiport)としてKイオンが排出されたと推測される。そのNaイオン数とKイオン数との関係は、回帰係数からおよそ4:1であると考えた。3樹種で調べた各器官のNaイオンの増加率とClイオンの増加率との関係は、葉以外の器官では相関係数r=0.864**と高い相関が得られ、器官がNaイオンを吸収するときに、かなり安定した比率でClイオンを吸収していた。木部中の柔細胞の働きによって葉へのNaやClの輸送が抑制されて、耐塩性に影響していることを示した。
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