1996 Fiscal Year Annual Research Report
原生林に対する撹乱の歴史とその影響に関する花粉分析学的研究
Project/Area Number |
06660196
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
高原 光 京都府立大学, 農学部, 助教授 (30216775)
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Keywords | 大台ケ原 / 芦生 / 森林動態 / 撹乱 / 花粉分析 / 炭素片分析 / ギャップ |
Research Abstract |
奈良県大台ケ原と京都府芦生の原生林において堆積物を採取し,時間スケールを短くした詳細な花粉分析と炭素片分析等によって,両原生林における森林変遷と撹乱の歴史について検討した。以下にこれらの結果を要約する。 1.植生と土壌中の花粉組成の関係 大台ケ原と芦生の両原生林において植生と表層土壌中の花粉組成の関係を検討した結果,ある地点周辺を被っている高木樹種の植被率と表層土壌中のその樹種の花粉頻度に正の相関が認められた。これを,花粉分析結果の解釈に用いて森林変遷を解明した。 2.大台ケ原における森林変遷と撹乱 正木が原周辺のトウヒ林は,少なくとも800年間は継続しているが,それ以前にトウヒの非常に少ない時代が存在した。正木が原の西方斜面では,約800年前以前には現在よりもヒノキが優勢な森林であった。七つ池のブナ-ウラジロモミ林について,120m×160mの固定プロットを設定し,森林動態を調べた。七つ池付近では,ブナ-ウラジロモミの森林が少なくとも1300年以上続いていた。このプロット内で,約300年前に小さくとも直径20mのギャップが形成され,ミズナラがこれを埋めた。この地点のミズナラの樹齢は年輪から約300年であった。花粉分析と年輪解析の結果は調和的であった。このギャップ形成期に堆積物中の炭素片量も増加した。このことから落雷などの小規模な火災によるギャップ形成の可能性がある。 3.芦生における森林変遷と撹乱 芦生の長治谷湿原周辺では10世紀から15世紀初頭にはスギが極めて優勢な森林が発達していた。当時のスギの花粉堆積量は現在のスギ人工林のそれに等しかった。15世紀以降,火災を示す炭素片が堆積物中で増加した。これに伴いスギは減少し,ナラ類,クリなど二次林要素が急増した。 この研究によって,森林動態の研究に花粉分析法が適用できることを明らかにすることができた。
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