1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660236
|
Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中坊 徹次 京都大学, 農学部, 助教授 (20164270)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 泉 京都大学, 農学部, 助手 (60225000)
田中 克 京都大学, 農学部, 教授 (20155170)
|
Keywords | スズキ / タイリクスズキ / ヒラスズキ / スズキ有明海産個体郡 / ミトコンドリアDNA / アロザイム |
Research Abstract |
今年度は研究の締めくくりと次ぎの研究へのステップとして、スズキ各地個体群、タイリクスズキ(中国産)、ヒラスズキの遺伝的情報による相互の類縁関係の推定をミトコンドリアDNAのDループ領域を解読することと、アロザイムを分析することで行った。 用いた材料は、スズキは大阪湾、鳥取県、宮崎県、朝鮮半島西岸、有明海、タイリクスズキは朝鮮半島西岸、台湾、ヒラスズキは高知県から得られたものを用いた。その結果、以下の大変興味深いことがわかった。 ミトコンドリアDループ領域の示すハプロタイプはスズキ型、タイリクスズキ型、ヒラスズキ型の3型にわけることができた。スズキ型のハプロタイプは大阪湾、鳥取県、宮崎県、朝鮮半島南岸のスズキに同定される標本のすべて、タイリクスズキ型のハプロタイプは台湾、朝鮮半島西岸のタイリクスズキに同定される標本のすべて、ヒラスズキ型のハプロタイプはヒラスズキに同定される標本のすべてが持っていることがわかった。興味深いのは有明海のスズキ個体群で、これは80%の個体がタイリクスズキ型、20%の個体がスズキ型のハプロタイプをもっていることがわかった。さらに、核DNAの情報を反映しているアロザイムを分析した結果、有明海のスズキ個体群はタイリクスズキとスズキの遺伝子の半分づつを共有していることが判明した。これらのことは有明海のスズキ個体群が過去にタイルクスズキとスズキが交雑した個体群を祖先にもち、現在は両者のどちらとも交雑していない独立した個体群であることを暗示している。 今後は平成6・7年度と今年度に得られた結果を基礎にして、有明海のスズキ個体群の独立性に焦点をしぼって研究を進めて行く必要がある。現在、そのテーマで、科学研究補助金を申請しているところである。
|