1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660274
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
豊田 隆 筑波大学, 農林学系, 助教授 (00142836)
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Keywords | 多国籍企業 / アグリビジネス / 食料貿易 / 開発途上国 / ラテンアメリカ型 / アジア型 / 小農 / 垂直的統合 |
Research Abstract |
開発途上国における多国籍企業(MNC)アグリビジネスによる貿易と投資、および農村開発の基本問題を南米とアジアとを比較しつつ解明した。 1.南米におけるMNCアグリビジネスと農村開発 (1)チリにおけるMNCアグリビジネスは、果実生産における南半球の季節差を活かし、農地改革で創出された中小農を含めて垂直的な契約生産システムによって統合し、技術移転をすすめ、雇用機会を提供し、寡占的な輸出市場の構造を創出した。しかし、開発効果の波及しえない地域の小農は、「開発ギャップ」のもとで貧困と飢餓に直面しており、新しい社会的不公正を生じたことを明らかにした。 (2)パラグアイにおける農業構造の二重性(dualism)は、植民開発政策によっても是正されず、世界市場と結合した大農と自給的な小農との格差は拡大した。小農自立のための農村開発において、日本農業の経験である「むらづくり」の手法の有効性を示唆した。 2.アジアにおけるMNCアグリビジネスと農村開発 (1)フィリピンにおけるMNCアグリビジネスは、グローバルな「バナナ戦争」のなかで、チキ-タ社の撤退等の変動過程にある。アキノ政権時の包括的農地改革法(CARL)は、プランテーションの土地所有をも対象としたために、その分権化、パルセラ(parcela)化が進展し、農園労働者を小農へ育て、契約生産へ再編する方向が強まっている。またMNCは日本国内への展開にあたって、卸売商・量販店等との「製配販同盟」の戦略を強めている。 (2)日本型アグリビジネスのアジアへの海外移転を把握するため、冷凍食品企業(エビフライ・加ト吉等)のタイへの海外直接投資による現地生産法人(Seafresh等)の設立、およびタイにおけるエビ養殖事業の展開、農村開発・協同組合化について実態調査を計画し、今後この面でも研究を強化していきたい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 豊田 隆・徳田博美・森尾昭文: "「貿易自由化と果樹農業の国際化」" 筑波大学農林社会経済研究. 第12号. 73-141 (1994)
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[Publications] TOYODA,Takashi: "Multinational Corporations and Rural Development in Chile" 農業経営研究. 第32巻(印刷中). (1995)
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[Publications] TOYODA,Takashi: "Dualism in Paraguay's Agricultural Structure and Rural Development" 開発学研究. 第5巻(印刷中). (1995)
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[Publications] 豊田 隆: "書評 犬塚昭治著「食料自給を世界化する-その論理と可能性-」" 農林統計調査. 第44巻. 54-55 (1994)
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[Publications] 豊田 隆: "「バナナ・プランテーションの多国籍企業」世界を読む" 日本農業新聞(12月25日). 3- (1994)
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[Publications] 豊田 隆・森尾昭文: "「貿易の自由化と日本の農業」" 帝国書院 地域・地図資料. 92号. 9-12 (1995)
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[Publications] 豊田 隆: "今村奈良臣編著「農政改革の世界史的帰趨」" 農山漁村文化協会, 355 (1994)