1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660285
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩元 泉 九州大学, 農学部, 助教授 (10193773)
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Keywords | 兼業農家 / 農業生産組織 / 農家の多就業形態 |
Research Abstract |
まず,兼業農業の統計的解析によって,3割程度の借地が第2種兼業農家によって行われている事実を明らかにし,第2種兼業農家の大半は「事実上の非農家」であるという説に対する疑義を提示した。 つぎに,東北地方(秋田,宮城)と九州地方(福岡)の兼業農家の存立構造に関する比較検討では,稲作農業の生産構造(一毛作と二毛作,規模の大小,水利構造)に起因する生産単位の「均質性」と「多様性」が東北地方と九州地方では異なっており,それが兼業農業の存立にも作用していることが明らかになった。すなわち,東北では比較的大規模な生産構造の上で,稲作に依存した農業構造をとってきたため,専業での存立限界も九州に比べて高かったが,その分兼業対応が遅れ,多様な展開が限られるという傾向がみられたのである。 さらに福岡県Y町において農業生産組織の存立している集落と,組織化されていない集落で農家悉皆調査を行い,同様に兼業化している場合でも組織化によって,生産力水準が平準化し,稲作作業効率も高まっていることが分かった。同時に,組織化された集落においては,作業効率が高まっていることから,兼業に従事しながらも借地や受託を拡大する兼業農家がみられ,今後の稲作担い手についての見通しが立てられるが,組織化されていない場合には,見通しは全く不明瞭であるという違いがみられた。 兼業農家の中には,借地によって規模拡大を図る農家があるが,その場合の兼業先は比較的時間的に融通のきく職種であることが多い。従って兼業先に束縛された規模拡大の限界は,現在の10ha前後の経営規模では発生していない。
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