1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660347
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山口 高弘 東北大学, 農学部, 助教授 (20111297)
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Keywords | 牛最長筋 / 筋肉内脂肪 / 脂肪芽細胞 / 分化成長因子 / 成熟脂肪細胞 / 脂肪交雑 |
Research Abstract |
平成7年度は昨年度の成績に基づき牛の骨格筋内脂肪形成(脂肪交雑)すなわち筋肉内脂肪細胞の分化、成熟の機序を培養系で細胞生物学的に詳細に検討した。(1)牛の胸最長筋内脂肪細胞の分化誘導に対するデキサメサゾン(DXMS)とインスリン(INS)の作用:培養系で出現した脂肪細胞を細胞内の脂肪滴の発達程度によって、多数の小さな脂肪滴を持つ脂肪前駆様細胞(I型)、1個ないし数個の大きな脂肪滴を持つ成熟型脂肪細胞(III型)、中程度の大きさの脂肪滴を数個持つ中間型の脂肪細胞(II型)の3タイプに分類した。骨格筋由来の間質細胞に関して、無添加区、INS単独添加区、DXMS単独添加区では脂肪細胞が出現しなかった。これに対し、INS、DXMS、トランスフェリン(TRFR)、トリヨードサイロニン(TITR)添加区では、脂肪細胞数が平均70.0個出現し、I型細胞が44.8%、II型細胞が30.1%、III型細胞が25.3%であった。このように、培養系での骨格筋由来の細胞からの脂肪細胞の分化、成熟には、INS、DXMSが必要であった。一方、腎周囲脂肪由来の間質細胞では無添加区において、脂肪細胞数が54.3個(I型:35.0%、II型:38.6%、III型:26.4%)出現した。INS、DXMS、TRFR、TITR添加区では、脂肪細胞数が433.7個(I型:36.9%、II型:41.7%、III型:21.4%)と著しく増加した。INS単独添加区で脂肪細胞数は51.5個であったがIII型細胞の割合が67.0%と著しく増加した。DXMS単独添加区では脂肪細胞数が366.3個が出現し、I型細胞が65.8%でIII型細胞が1.6%とI型細胞の割合が増加し、III型細胞の割合が著しく減少した。TRFRとTITRの添加区では脂肪細胞は出現しなかった。以上の結果より、脂肪細胞の分化誘導に関して、DXMSが脂肪細胞の分化誘導に、ISNが脂肪細胞の成熟に作用することが判明した。しかし、骨格筋由来細胞では腎周囲脂肪由来細胞と異なり、個々の因子単独では脂肪細胞の分化誘導は起こらないことが明らかとなった。(2)牛の筋腫間での筋肉内脂肪細胞の分化、成熟能の比較:脂肪交雑が形成されやすい腹鋸筋、中程度に形成される胸最長筋、形成され難い腓腹筋において、脂肪細胞の分化、成熟の程度を比較した。それぞれの骨格筋由来の間質細胞をINS、DXMS、TRFR、TITR添加区で培養したところ、出現した脂肪細胞は腹鋸筋では147.3個(I型:24.5%、II型:35.3%、III型:40.2%)、胸最長筋では65.8個(I型:41.7%、II型:33.5%、III型:24.8%)、腓腹筋では3.8個(I型:80.2%、II型:19.8%、III型:0.0%)であった。このように、牛の骨格筋の間質細胞からの脂肪細胞の分化および成熟は筋腫間の脂肪交雑の程度に相応することが明らかとなった。このことは骨格筋の脂肪交雑は筋肉内の脂肪細胞の脂肪蓄積能よりも脂肪細胞に分化する脂肪前駆細胞の数に依存することを示すものである。 以上の様に、本年度の実験計画はほぼ予定通り遂行し、満足のいく結果が得られた。
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[Publications] Hisasi ASO: "A preadipocyte clonal line from bovine intramuscular adipose tissue" Biochem. Biophys. Res. Commun.213. 369-375 (1995)
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[Publications] Takahiro YAMAGUCHI: "Differentiation and characterization of bovine intramuscular adipocytes in vitro" J. Anim. Sci.(発表予定).
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[Publications] Takahiro YAMAGUCHI: "Differentiation of adipocyte precursor cells from bovine intramuscular adipose tissue" J. Dairy Sci.(発表予定).