1994 Fiscal Year Annual Research Report
種々の超低温保存が家畜および実験動物の未受精卵子の染色体に与える影響について
Project/Area Number |
06660349
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
吉澤 緑 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (60114162)
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Keywords | マウス / ウシ / 未受精卵 / 超低温保存 / 染色体 / 染色体異常 / 転座染色体 / 凍結 |
Research Abstract |
最近、哺乳動物における未受精卵子の超低温保存の研究が緒に付いているが、その細胞遺伝学的安全性に関しての検討は十分ではない。卵子を超低温保存した際の卵細胞質および核質への物理的、構造的影響、特に、遺伝子の担体である染色体への影響として、染色体の不分離による数的異常や構造的異常の発生が懸念される。これらは体外受精およびその後の胚の発生に多大な影響を与えるものであり、詳細な検討が必須と考えられるが、研究報告は数少なく、国内では殆ど皆無であった。 本研究においては、転座染色体を有する雄マウス、雄牛の精子を用いて卵子由来および精子由来の染色体グループを明確に識別し、超低温保存が未受精卵子の染色体に与える影響について詳細に検討することによって、マウスおよび牛未受精卵の超低温保存法を細胞遺伝学的見地から検討し、配偶子および胚の凍結法の実用化に貢献しうるものと考えた。 本年度は、マウス未受精卵子を凍結融解後、転座染色体をホモに有する雄の精子を用いて体外受精させ、第1分割期において卵子由来および精子由来の染色体グループを明確に識別し、超低温保存が未受精卵子の染色体に与える影響について詳細に検討した。その結果、凍結融解後の体外受精によって、未受精であった卵子の染色体に構造的異常が観察された。しかし、受精率がまだ低く例数も少ないことから、統計的検討を行うまでは至らず、さらに例数の蓄積が必要と考え、現在研究を進行中である。また、家畜卵子への応用として同様の実験を牛未受精卵子を用いて行うために、まず、牛体外受精卵における第1分割期染色体の検出について検討し、方法の確立を行うことができた。来年度は、牛においてマウスの場合と同様に転座染色体を有する雄牛の凍結精液を用いて体外受精後、第1分割期の染色体を観察し、超低温保存が卵子染色体へ与える影響について追究する予定である。
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