1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06660365
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
首藤 分榮 岩手大学, 農学部, 教授 (60001533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 昌之 北海道大学, 獣医学部, 教授 (80036441)
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Keywords | ボツリヌスC3 / 神経細胞分化 / 神経回路網形成 |
Research Abstract |
神経細胞分化の分子機構を解析するに当たって,分化誘導活性を持っている物質の利用は必要不可欠である.ボツリヌスC型およびD型菌のADP-リボシル基転移酵素(C3)は,低分子量GTP結合蛋白質を特異的にADP-リボシル化すること,PC12細胞に作用して,神経突起を伸展させることが報告されている.もし,C3による細胞の分化的変化が正常の細胞でみられるものと同じであれば,分化機構解析の有力な手段として利用することができる.そこでこの研究では,C3により引き起こされる現象が,神経細胞の分化と同じものであるかどうかを,分子レベルで検討した. PC12,NG108-15,C6およびNS20Yの細胞培養系にC3を加えると,形態変化と神経突起の伸長が誘導された.この変化は,分化様変化を引き起こすジブチリルサイクリックAMP(DbcAMP)の効果と良く似ていた.この形態的変化と対応させて,分化の指標酵素の活性上昇を調べたところ,アセチルコリンエステラーゼ,コリンアセチルトランスフェラーゼおよび2′,3′サイクリックヌクレオチドホスホヒドロラーゼの活性がいずれも上昇していた。この実験でC3は,神経系細胞の分化機構の解析に利用できることが示された. 次に,これらの分化様作用の情報の流れを解析するために,NG108-15細胞を用いて,C3の作用に対するプロテインキナーゼ阻害剤(H89)の影響を調べた.その結果,形態的な変化に対するH89の影響は殆ど見られなかったが,先にみられた酵素活性の上昇が抑制されることが分かった.このことから,分化様変化に於ける形態変化と生化学的変化は必ずしも同一レベルで誘導されるものではないことおよびC3はプロテインキナーゼAを介して酵素活性の上昇をもたらしていることが示唆された.
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