1994 Fiscal Year Annual Research Report
植物の改良過程と炭素・窒素同化系酵素発現との相互関係の解析
Project/Area Number |
06660419
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
笹川 英夫 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 講師 (40115572)
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Keywords | オオムギ / グルタミン合成酵素 / アイソザイム / 品種間変異 / 完全展開葉 / 止葉 |
Research Abstract |
野生種から現代の栽培種を含むオオムギ60余種より,栄養成長期の上位完全展開葉4枚および出穂後の止葉を経時的にサンプリングし,グルタミン合成酵素の2つのアイソザイム(GS1,GS2),リブロース-1,5-ビスフォスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco),可溶性タンパク質,クロロフィル量を定量し,品種間変異を解析した。得られた新たな知見は以下のようであった。 1.完全展開葉の可溶性タンパク質,Rubisco,GS1,GS2量は大多数の品種で,下位葉ほど低くなる傾向を示した。クロロフィルは葉位に関係なく,ほぼ一定値であった。これに対し,雑草的形態をもつ野草種ではいずれの量も下位葉ほど高くなる傾向を示した。分げつを行わないユニカム種では葉位に関係なく,一定に保たれていた。 2.完全展開葉のGS1,GS2量の変動様式で品種分けすると,(1)GS1,GS2が同じ挙動で下位葉ほど低下するもの,(2)GS1とGS2が同じ挙動で下位葉まで一定または増加するもの,(3)GS1の低下が小さく下位葉でGS1/GS2が1を越えるもの,(4)上位第1葉でGS1/GS2が1を越えるもの,(5)下位葉ほどGS1が高いものの5つに分類された。野生種は(1)または(2)に含まれた。そのなかでも雑草的形態の強いものは(2)に,日本の古い品種やビール麦は(4)に含まれた。 3.止葉におけるGS1/GS2は,多くの栽培品種で出穂後4週目で特に顕著に変動したが,野生種のいくつかの品種,ネパール産品種ではサンプリング時期を問わずほぼ一定値を維持していた。 栄養成長期の上位完全展開葉および止葉の老化過程におけるGS1/GS2が品種間で異なるということは,それぞれの品種の持っている窒息同化能力,転流能力の変異を示しているものと考えられる。GS1/GS2が植物の改良過程の指標となりうるのかどうかについて,今後さらに検討を進めていく予定である。
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