1994 Fiscal Year Annual Research Report
細胞骨格と細胞外基質とから見た弾性・筋性動脈の移行部の機能構築についての研究
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06670038
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
坂井 建雄 順天堂大学, 医学部, 教授 (90114488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 憲司 順天堂大学, 医学部, 助手 (40053342)
小林 直人 順天堂大学, 医学部, 助手 (50234836)
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Keywords | 弾性動脈 / 筋性動脈 / 細胞骨格 / 細胞外基質 / 肺動脈系 / 腎内動脈系 |
Research Abstract |
平成6年度は、当初の計画通り、ラットの肺と腎の完全連続切片の作成と、光学および電子顕微鏡による観察を優先させた。臓器を完全にカバーする連続切片の精密な観察と、電子顕微鏡による超微細形態学的所見により、以下の点が明らかになった。 (1)弾性動脈から筋性動脈への移行は、腎内動脈系では大動脈から腎動脈が分岐する点で起こるのに対し、肺動脈系においては肺の実質組織内にあることが示された。また、両者の移行は特定の場所で比較的“急激に"起こることが明らかとなった。 (2)肺動脈の生体力学的構築を考慮した新しい分類法を提唱した(Sasaki et al.,印刷中)。従来の動脈分節の分類法では、弾性板や平滑筋といった、壁の生体力学的構成成分についての認識が不十分であった。我々は、弾性動脈をさらに二つ(Classical Elastic Segment、Transitional Elastic Segment)に、筋性動脈をさらに三つ(Thick Muscular Segment、Ordinary Muscular Segment、Partially Muscular Segment)に分類し、この他にNon-muscular segmentを区別する、新しい分類法を提唱している。さらに、肺の中でこれらの分節がどのように分布しているかの完全な“地図"を作成し、肺動脈系の構造・機能に部位による“不均一性"があることを明らかにした。弾性動脈から筋性動脈へは、大きな分岐の有る無しとは関係なく、動脈の内径の大きな変化なしに、移行が起こっていた。 (3)大動脈から腎動脈への移行部では、弾性動脈と筋性動脈との間に、細胞外基質や弾性板が両者の中間的な性質を持つ短い部分を介していた。
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Research Products
(20 results)
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[Publications] 坂井建雄: "三木学の解剖" 現代思想. 22. 204-211 (1994)
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[Publications] 坂井建雄(解説・翻訳): "F・メルケル『ヤコブ・ヘンレー-回想の講演』" 科学医学史料研究.236. 1-9 (1994)
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[Publications] 坂井建雄: "人体(生命の階層性、免疫系、脳・神経系、循環器系、消化器系、排泄系)" 情報・知識imidas. 1995. 1020-1029 (1994)
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[Publications] 村田一彰ら: "ヒト踵骨の前・中距骨関節面と靭帯の多様性について." 解剖学雑誌.69. 42-49 (1994)
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[Publications] 本間敏彦ら: "手内筋の解剖学" 解剖学雑誌. 69. 123-142 (1994)
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[Publications] 小泉憲司ら: "右側大動脈弓の一解剖例、およびその主要分枝と動脈管の変異についての発生学的な考察." 解剖学雑誌.69. 252-260 (1994)
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[Publications] Sasaki-S,et al.: "Structural organization of pulmonary arteries in the rat lung." Anat-Embryol.(印刷中). (1995)
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[Publications] Kobayashi-N,et al.: "Structural differentiation of endothelial basement membrane in the kidney vasculature." Cont-Nephrol.107. 10-20 (1994)
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[Publications] Kobayashi-N,et al.: "Postnatal reorganization of actin filaments and differentiation of intercellular boundaries in the rat aortic endothelial cells." Cell-Tiss-Res.278. 471-482 (1994)
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[Publications] Kriz-W,et al.: "A role for podocytes to counteract capillary wall distension." Kidney-Int.45. 369-376 (1994)
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[Publications] Homma-T,et al.: "Intrinsic hand muscles of the Japanese monkey,Mucaca fuscata." Anthropol-Sci.(suppl). 102. 85-95 (1994)
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[Publications] 坂井建雄: "腎血管系・糸球体の微細構造と力学." 腎と透析. 36. 549-555 (1994)
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[Publications] 坂井建雄: "力学的構造としての糸球体." 腎と透析. 37. 839-840 (1994)
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[Publications] 坂井建雄: "糸球体基底膜の構造." 腎と透析.臨時増刊号. 37. 37-42 (1994)
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[Publications] 小林直人ら: "血管系の微細構造とその調節機構." 腎と透析.臨時増刊号. 37. 75-82 (1994)
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[Publications] 坂井建雄ら: "糸球体の力学的構築と濾過障壁の生後発達." 発達腎研究会誌.2. 3-10 (1994)
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[Publications] 坂井建雄: "傍糸球体装置の微細構造." 内科.73. 346-347 (1994)
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[Publications] 坂井建雄: "メサンギウム細胞と糸球体基底膜--糸球体構造の維持装置." 内科.73. 934-935 (1994)
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[Publications] 坂井建雄(共著): "電子顕微鏡 基礎技術と応用1994〜物質のナノ局在解析〜" 学際企画,東京.第5回電顕サマースクール実行委員会(編), 267 (1994)
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[Publications] 坂井建雄: "人体のしくみ.入門ビジュアルサイエンス" 日本実業出版社,東京, 174 (1994)