1994 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖・分化におけるエストロジェン受容体とプロトオンコジーン蛋白の役割
Project/Area Number |
06670042
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Research Institution | Keio Junior College of Nursing |
Principal Investigator |
山下 修二 慶應義塾看護短期大学, 教授 (90050666)
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Keywords | エストロジェン受容体 / ラクトフェリン / プロトオンコジーン / 免疫電顕 / マウス / 子宮 |
Research Abstract |
今年度は1)子宮上皮における17-b estradiol(E2)投与後のエストロジェンリセプター(EsR)の核内局在の変化、2)E2依存性に合成される核内プロトオンコジーンおよびラクトフェリン(LF)の誘導過程と細胞内局在について検索した。 1)子宮上皮におけるEsRの核内局在の変化 去勢した成熟雌マウスにE2、又は生理食塩水(対照)を投与し、1時間後に子宮上皮核内のEsRの局在を免疫電顕法で検索した。凍結超薄切片を作製し、1nm金コロイド標識抗体を用い、銀増感によって局在を可視化した。E2投与1時間では、クロマチンの構造および核内の微細構造の変化は認められなかった。E2未結合EsR(対照)、E2結合EsRとも主として分散したクロマチンに局在し、核膜周囲の高度に凝集したクロマチンには非常に少量のEsRが存在した。核小体は対照、E2投与群とも反応陰性であった。したがってホルモンと結合したEsRは核内を大きく移動しないで、近傍に存在する遺伝子の転写を活性化していることが示唆された。 2)核内プロトオンコジーンとLFの誘導過程と細胞内局在 E2投与後、経時的にマウス子宮におけるLF、c-Fos、c-Junの局在を免疫組織化学によって検索した。LFはE2投与後、短時間(1時間)で核小体に検出され、6-13時間で最も強い反応が核小体に認められた。E2投与後、13時間以降ではLFは主として分泌経路(ゴルジ装置、分泌顆粒など)に局在した。従来LFは“late gene"であると考えられ、その発現は子宮上皮の分化の指標として用いられていた。しかし本研究では、核小体LFはc-fos、c-junなど核内プロトオンコジーンと同様に、E2依存性に速やかに活性化される“immediate early gene"の一つであることが示唆された。核小体LFは上皮の増殖、分化に先だってリボゾームの形成に関与しているものと思われる。c-FosはE2投与後2-3時間で子宮上皮の核に検出され、その後消失するが再度10-15時間後に子宮上皮の核に出現した。c-Junは、E2投与後2-3時間で間質細胞と平滑筋細胞に出現し、以後その量は徐々に減少した。一方、子宮上皮では10-15時間に一過性に検出された。E2投与後10-15時間は子宮上皮においてはDNA合成期にあたり、c-Fos、c-Jun heterodimerが転写制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。現在この結果をさらに確認するためにc-fosとc-jun mRNAの検出をin situ hybridizationによって行なっている。
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[Publications] Yamashita,S.: "Intranuclear localization of hormone-occupled and -unoccupled estrogen receptors In the mouse uterus:Application of 1 nm immunogold-silver enhancement procedure to ultrathin sections." J.Electron Microsc.44. 22-29 (1995)
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[Publications] Yamashita,S.: "Immunohistochemical study of estrogen-induced lactoferrin-like protein in the mouse uterine cell.:Locallization in the nucleolus and secretory pathway." Acta Histochem.Cytochem.28(in press). (1995)