Research Abstract |
ウシガエルをエーテル麻酔下で中枢神経を破壊して殺し,後肢より半膜様筋を取り出し,これから1本の筋繊維を摘出した.これを光学実験用チェンバーに張り,高速施光測定装置によって,筋繊維の興奮に伴う光学的シグナルを記録した.光源として,250Wのハロゲンランプを用い,550nmの干渉フィルターにより準単色光とした.筋繊維の一端に1msの持続のパルスを与えて興奮させ,他の一旦から細胞外活動電位の誘導を行った.光学的シグナルとしては,吸収シグナル,複屈折性シグナル,施光性シグナルを記録した.刺激に応じて,大きな光学的シグナルが誘導されたが,筋繊維が刺激に応じて収縮するので,これによるア-テファクトを調べる必要があった.結論のみを述べると,筋繊維の運動によるア-テファクトを防ぐためには,次のような方針が適当であることが分かった.1)筋繊維の運動をできるだけ減少させるような条件を選ぶこと.このためリンゲル氏液の溶媒を水から95%の重水に取り替え,筋繊維にできるだけ伸展した.これによって,双眼顕微鏡の下では筋繊維の運動は見られなくなった.2)複屈折性シグナルは,速いシグナル(刺激後約30msまで)以外は筋繊維の巨視的運動の影響を受けているものと考えるべきである.これに対して,施光性シグナルは,巨視的運動の影響が少なく,全経過にわたってほぼ信用できる.吸収シグナルは解析には用いない. 複屈折性シグナルも,施光性シグナルも,速い相と遅い相の二つが明瞭に区別できるのが普通であった.この速い相は,興奮収縮連関に関連し,これに対して,遅い相は,収縮性蛋白質の活動に関連しているものと考えることができた.その1つの根拠として,標本に0.01mMのライアノジンを与えると,遅い相のみが選択的に消失した.また,1mMのカフェインを与えると,速い相は大きくなり,遅い相もまた促進された.
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