1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの自律神経反射におよぼす運動鍛練の影響に関する研究
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06670092
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
佐川 寿栄子 産業医科大学, 医学部, 助教授 (20035489)
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Keywords | 血圧反射 / 頸動脈圧受容器 / R-R間隔 / 運動鍛練 / ネックチャンバー |
Research Abstract |
よく運動鍛練されたヒトは姿勢変換時耐性が小さいと言われているがこの原因は明らかにされていない。本研究の目的は運動鍛練されたヒトの姿勢変換時耐性低下の原因として、頚動脈圧受容器(高圧系)および/または心肺圧受容器(低圧系)を介した血圧反射の感受性の低下またはリセッティングが関与しているか否かを調べることである。本年度は運動鍛練者と非鍛練者について頚動脈圧受容器-心臓反射を調べる実験を行い、以下の新しい知見が得られた。運動鍛練者としては6年間以上長距離選手としてトレーニングしている体育専攻の女子学生10名(18-19才)、非鍛練者として医学生女子学生9名(18-22才)を実験対象とした。運動鍛練者は非鍛練者に比べて最大酸素消費量が有意に大きく、また安静時の心拍数が有意に低値であった。頚動脈を外部から圧迫または吸引出来る装置(ネックチャンバー)を用いて頚動脈圧受容器を刺激し、心臓の圧応答をR-R間隔を指標に評価した。R-R間隔の圧反射応答はシグモイドカーブでフィットさせ解析した。その結果、運動鍛練者の圧反射応答曲線は非鍛練者のそれより明らかに上方にシフトした。これは運動鍛練による安静時の心拍数の低下(R-R間隔が大)を反映している。運動鍛練者では頚動脈圧変動に対するR-R間隔の反応幅が非鍛練者より大きく、またR-R間隔の圧応答曲線の最大勾配も大であった(P<0.05)。これは運動鍛練者は血圧変動に対する心臓の圧応答の感受性が大でまたbuffer capacityも大きいことを意味する。しかし心臓の圧応答のリセッティングの指標となるシグモイドカーブの中心点は両者の間で差がなかった。運動能力の指標である最大酸素消費量に対してR-R間隔の圧応答曲線の最大勾配をプロットすると、両者の間に有意な正の相関関係が認められた(r=0.693、p<0.005)。これは運動能力の優れているヒトほど心臓の圧反射応答の感受性が大であることを現しており、運動鍛練されたヒトの姿勢変換時耐性低下の原因として頸動脈圧受容器-心臓反射の感受性の低下あるいはリセッティングの可能性は否定された。
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