1994 Fiscal Year Annual Research Report
エンドセリン受容体を介する心筋ATP感受性Kチャネルの制御とその病態生理学的意義
Project/Area Number |
06670099
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中谷 晴昭 千葉大学, 医学部, 教授 (60113594)
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Keywords | 心筋梗塞 / エンドセリン-1 / ATP感受性Kチャネル / Kチャネル開口薬 / 活動電位 / ATP感受性K電流 / 心臓 |
Research Abstract |
急性心筋梗塞の時、血中のエンドセリン-1(ET-1)が増加し、虚血心筋においてはATP感受性Kチャネルの活性化により、活動電位持続時間(APD)が短縮する事がよく知られている。しかしながら、ET-1が心筋細胞のATP感受性Kチャネルに対しどの様な影響を与えるかは検討されていない。そこでKチャネル開口薬で活性化したATP感受性K電流(I_<K.ATP>)およびAPD短縮に対するエンドセリン(ET)の作用を検討した。モルモット右室乳頭筋において、膜電位と張力の同時測定を行い、ET-1 30nM単独、nicorandil 1mMおよびcromakalim 30μM存在下にET-1、ET-3を各々30nM加えた場合のAPDと発生張力の変化を観察した。乳頭筋標本においてET-1単独では、収縮張力は平均172%増加したが、APDには有意な変化を認めなかった。nicorandilによりAPD_<50>は41%短縮し発生張力は62%減少したが、ET-1添加後、APD_<50>は30%、発生張力は145%増加した。ET-3添加後はAPD、収縮張力共、有意な変化は示さなかった。またcromakalimでもAPD_<50>、発生張力はそれぞれ73%、76%減少したが、ET-1添加後やはりAPD_<50>は20%、発生張力は135%増加した。また単離したモルモット心室筋細胞を用いwhole cell clamp法にて膜電流を記録、Ca電流を遮断後ramp波にて疑似定常状態膜電流を記録し、1mM nicorandilあるいは30μM cromakalimにてI_<K.ATP>を活性化した後、ET-1およびET-3の影響を検討した。nicorandilによって活性化されたI_<K.ATP>に対し30nMのET-1は0mVレベルの外向き電流を平均30%抑制したのに対し、ET-3は有意な影響を与えなかった。また、cromakalimで活性化させたI_<K.ATP>をET-1は42%抑制した。ET_A受容体拮抗薬であるBQ-485 100nM存在下ではET-1のI_<K.ATP>抑制作用を認めなかった。ET-1のI_<K.ATP>抑制作用はC-Kinase抑制薬のstaurosporine(20nM)あるいはcalmodulin拮抗薬のW-7(50nM)で抑制されなかった。また百日咳毒素処置でGi蛋白を不活性化させた細胞ではこの抑制作用はむしろ増強した。これらの実験結果から、その詳細な細胞内機構は未だ不明であるがET-1はKチャネル開口薬で活性化したI_<K.ATP>に対し、ET_A受容体を介し抑制的に働く事が明らかとなった。ET-1は心筋虚血時に活性化するI_<K.ATP>に抑制的に作用しAPDを延長させ、虚血心筋障害を増悪させる可能性が示唆された。
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