1994 Fiscal Year Annual Research Report
細胞障害と薬剤耐性に関与するアンチオキシダントの酸化的ストレスによる発現誘導
Project/Area Number |
06670145
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
近藤 宇史 長崎大学, 医学部, 教授 (00158908)
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Keywords | グルタチオン / 酸化的ストレス / 細胞障害 / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
細胞障害を引き起こす酸化的ストレスに対する細胞内防御機構を、特にグルタチオンとそれに関連する酵素を中心に検討した。血管内皮細胞を用いた実験では、細胞内グルタチオン濃度をグルタチオンエステル添加で上昇させたりリブオニンスルフォキシミン添加で減少させた後にt-butylhydroperoxideを投与して観察すると、グルタチオン濃度とMTTアッセイ法による細胞障害度に負の相関が認められた。更に、この酸化的ストレスによってグルタチオン合成の律速酵素である、γグルタミルシステイン合成酵素(γGCS)の活性上昇が数時間で認められた。この活性上昇は、γ-GCSmRNAの発現と酵素蛋白の合成に引き続いて生じることが明かとなった。 ヒト卵巣ガン細胞、大腸ガン細胞、肺ガン細胞などの培養細胞でシスプラチン耐性細胞においてどのような機構が薬剤耐性に関与しているかを検討した。 これらのシスプラチン耐性細胞では、いずれも細胞内グルタチオン濃度が上昇していた。γ-GCS活性、酵素蛋白量、mRNAの発現は耐性細胞で高かった。一方、スーパーオキシドジスムターゼ活性、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ活性、グルタチオン過酸化酵素活性、グルタチオン還元酵素活性には変化は認められなかった。次にシスプラチンがどのようにして細胞内で代謝されているかを検討すると、この薬剤は細胞内へ取り込まれた後に、グルタチオンと結合し、その後に細胞外へ輸送されることが明かとなった。この輸送系はエネルギー依存性であった。シスプラチン耐性細胞ではどの細胞でもグルタチオンと結合した細胞外への輸送活性が上昇していた。これらのことから、ガン細胞がシスプラチン耐性を獲得する機序にグルタチオンの合成増加と細胞外への輸送活性の上昇が関わっていることが明らかとなった。現在γ-GCS遺伝子の発現調節機構を解明しているところである。
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