1995 Fiscal Year Annual Research Report
細胞障害と薬剤耐性に関与するアンチオキシダントの酸化的ストレスによる発現誘導
Project/Area Number |
06670145
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
近藤 宇史 長崎大学, 医学部, 教授 (00158908)
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Keywords | グルタチオン / γ-グルタミルシステイン合成酵素 / 細胞障害 / 薬剤耐性 / アンチオキシダント / 膜輸送 |
Research Abstract |
「目的」生体が細胞障害を防御したり、癌細胞が抗ガン剤に対し耐性を獲得する機構については幾つかの機序が考えられているが、特にグルタチオン(GSH)とその代謝産物の関与が示唆されている。本年度は、ヒト癌細胞株を用い、シスプラチン(CDDP)の解毒にGSHがいかに関与するかを代謝産物の細胞外への輸送とGSHの合成酵素であるg-グルタミルシステイン合成酵素(g-GCS)やGSH関連酵素の発現の面から検討した。 「方法と結果」ヒト癌細胞株として卵巣癌細胞(A2780)とその耐性株(A2780DDP)及びヒト大腸癌細胞(HCT8)とその耐性株(HCT8DDP)を用いた。GSH濃度は酵素リサイクル法により測定した。CDDPの細胞内外での動態を明らかにするために、HPLCを用いた分離と原子吸光によるCDDPの定量を行った。輸送実験は、3H-Glycineを用いて細胞外へ排出された代謝産物の放射活性を測定した。CDDPは、1時間の曝露でもGSHと1:2(モル比)の結合体を作り、細胞外へもこの結合様式で輸送された。その輸送速度は、耐性株で増加していた。更に、薬剤耐性癌細胞では、GSH濃度の増加、g-GCS活性の増加とmRNA発現の増加を認めた。同様に、グルタチオン S-トランスフェラーゼとグルタチオンペルオキシダーゼの増加が認められた。 「結論」CDDP耐性には、GSH合成速度の上昇、速やかな細胞内でのCDDP-GSH結合体の形成と、同結合体の細胞外への輸送が関与していると考えられた。
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