アルツハイマー病及び老化脳におけるプロテアーゼ及びインヒビターの病態の研究

1995 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06670194
• Research Institution: The University of Tokushima
• Principal Investigator: 伊井 邦雄 徳島大学, 医学部, 助教授 (50035507)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 小野 一雄 徳島大学, 医学部・附属病院, 医員 ; 田中 啓二 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助教授 (10108871) ; 唐渡 孝枝 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助手 (60108876) ; 木南 英紀 順天堂大学, 医学部, 教授 (10035496)
• Keywords: アルツハイマー病 / 老化 / プロテアーゼ / インヒビター / ユビキチン / 細胞変性 / 免疫組織化学

Research Abstract

本年度の成果は以下の1〜5に要約される。
1 徳島の家族性AD(FAD)の剖検例5例について同様にCB及びカテプシンD(CD)の局在を調べた結果、先に非家族性アルツハイマー病(AD)等においてみられたと同様の結果(Virchow´s Arch A Pathol Anat 423:185-194)が得られ、アルツハイマー神経原線維変化(NFT)や老人斑(SP)アミロイド(Λβ)の形成機序のひとつとして神経細胞やグリア細胞の蛋白分解系の機能異常がある可能性が考えられた。これらを基に考えられる治療への可能性を含め依頼により英文総説として誌上発表した。
2 本態、起源不明の顆粒空胞変性(GVB)についてCB,CDの局在状態を分析した結果、GVBは正常の神経細胞内に無数に局在するCB,CD強陽性のリソゾーム関連構造が変性を受けて生じたことが示唆された。(和文誌上発表済。別に英文誌投稿中)
3 各種のユビキチン(Ub)化蛋白(封入体)とプロテアゾーム(Ps:非リソゾーム性プロテアーゼ)の関係を調べた結果、老人斑やレビー小体では両者は共存しUb化蛋白の分解にPsが関与していることが示唆されたがNFTや線維性封入体、好酸性顆粒ではUbのみが局在しPsとの共存はみられなかった。(和文誌上発表済。別に英文誌投稿中)
4 正常人(6日〜84才)海馬のCB、及びカテプシンD(CD)の局在を調べた結果、老化に伴い神経細胞内のCB,CDの減少が見出され、老化現象として神経細胞内のリソゾーム性蛋白分解機構の障害が生じてくる可能性が示唆された。(和文誌上発表印刷中、別に第5回アルツハイマー病及び関連疾患に関する国際会議発表予定)
5(1) 老化ラット(2才)脳(10匹)についてCBの局在を調べた結果、種々の程度にCBの減少した神経細胞がみられた。
5(2) 1年7月間飼育した老化マウス(SLC,B6C3F1,58匹)にリューペプチン(Lp)又はクロロキン(Cq)を投与(40匹)した後、脳内のCBの局在を調べた結果、Lp投与例ではCBの減少例がみられたがCq投与例では明かな変化はみられなかった。(和文誌上発表印刷中)
(以上1〜5に関する添付資料参照、別に英文論文2編投稿中)

Research Products

• [Publications] 伊井邦雄、小野一雄、木南英紀、唐渡孝枝、田中啓二: "アルツハイマー神経原線維変化、老人斑におけるカテプシンB,H,L(リソゾーム性システインプロテアーゼ)及びシスタチンα、β(システインプロテアーゼの内因性インヒビター)の選択的増加." 代謝異常治療研究基金研究業績集. 21. 149-158 (1994)
• [Publications] 伊井邦雄、小野一雄、木南英紀、唐渡孝枝、田中啓二: "顆粒空胞変性(Granulovacuolar bodies, GVB)の本態の解明 - リソゾーム性蛋白分解酵素の免疫組織化学による分析." 代謝異常治療研究基金研究業績集. 22. 137-142 (1995)
• [Publications] Kunio Ii: "The role of β-amyloid in the development of Alzheimer´s disease." Drugs & Aging. 7. 97-109 (1995)
• [Publications] 伊井邦雄、小野一雄、木南英紀、唐渡孝枝、田中啓二: "I 各種脳変性疾患や高齢者脳におけるユビキチン化異常蛋白(封入体)の分解におけるプロテアゾーム(非リソゾーム性プロテアーゼ)の関与. -免疫組織化学的研究-。" 代謝異常治療研究基金研究業績集. 23(in press). (1996)
• [Publications] 伊井邦雄、小野一雄、木南英紀、唐渡孝枝、田中啓二: "II 人の脳の老化とカテプシン(リソゾーム性プロテアーゼ):加齢による推移。" 代謝異常治療研究基金研究業績集. 23(in press). (1996)
• [Publications] 伊井邦雄、小野一雄、木南英紀、唐渡孝枝: "III 老化ラット及び老化マウス脳とカテプシン:リューペプチン及びクロロキン投与の影響。" 代謝異常治療研究基金研究業績集. 23(in press). (1996)