1994 Fiscal Year Annual Research Report
肝線維化における伊東細胞、特にその筋線維芽細胞化について
Project/Area Number |
06670195
|
Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
円山 英昭 高知医科大学, 医学部, 助教授 (00034645)
|
Keywords | 肝線維化 / 伊東細胞 / 筋線維芽細胞 / 形質転換 / サイトカイン / 細胞外マトリックス / 肝細胞壊死 / α平滑筋アクチン |
Research Abstract |
肝線維化は、すべての慢性肝疾患に必発し、一方では、病的過剰修復の代表的病変である。本研究は、肝線維化における伊東細胞の形質転換と線維増生との関連を解明することを主要な研究目的とした。 1.ヒトの肝細胞壊死後性肝線維では、局所の伊東細胞の細胞内にα-平滑筋アクチン(ASMA)陽性の微細線維が増量し、筋線維芽細胞に形質転換することを免疫組織および免疫電顕により初めて実証した。 2.ヒト肝の伊東細胞や筋線維芽細胞化伊東細胞の同定法としてホルマリン固定、パラフィン包埋薄切標本でも、抗ASMA抗体を用いた免疫組織化学的観察が応用出来ることを示し、従来、細胞の固定が、光顕観察上、困難であったヒト肝伊東細胞の観察法を確立した。 3.成因を異にする肝線維化例の経時的観察により、形質を転換し、筋線維芽細胞化した伊東細胞が、いずれの線維化においても主要な線維化担当細胞であることを示した。 4.伊東細胞の筋線維芽細胞化に傷害局所の伊東細胞とT細胞やマクロファージとの密接像が注目された。 5.伊東細胞の筋線維芽細胞化機序の直接的証明として、線維化巣内におけるtransforming growth factor(TGF)-β1(代表的なfibrogenic cytokine)陽性細胞の同定とTGF-β1mRNAの局在の証明を今なお試みている。 6.肝細胞癌組織でも内皮と癌細胞との組織間隙に、筋線維芽細胞に類似したASMA陽性間質細胞が局在し、癌組織の線維化に関連することを証明した。 以上、本研究の実施により、肝線維化では成因とは関係なく、肝細胞壊死部の伊東細胞が局所的に活性化され、筋線維芽細胞に形質を転換し、線維増生にあずかることが明らかになった。今後、さらに細胞の形質転換とサイトカインとの関連を観察し、肝線維化の抑制や制御など臨床面への応用を考えたい。
|
-
[Publications] H.Enzan: "Immunohistochemical identification of Ito cells and their myofibroblastic transformation in adult human liver" Virchows Archiv. 424. 249-256 (1994)
-
[Publications] H.Enzan: "α-smooth muscle actin-positive perisinusoidal stromal cells in human hepatocellular carcinoma" Hepatology. 19. 895-903 (1994)
-
[Publications] 円山英昭: "肝臓の筋線維芽細胞" 細胞. 26. 558-563 (1994)
-
[Publications] H.Himeno: "Immunoelectron microscopic observations on Leu-7 positive cells in virus-related liver diseases" Virchows Archiv. 424. 471-476 (1994)
-
[Publications] 円山英昭: "肝線維化と伊東細胞" 病理と臨床. 13. 367-374 (1995)
-
[Publications] H.Enzan: "Sequential changes of human Itocells and their relation to postnecrotic liver fibrosis in massive and submassive hepatic necrosis" Virchows Archiv. (in press).