1994 Fiscal Year Annual Research Report
癌患者の予後に影響を及ぼすムチン抗原の発現機構の解明
Project/Area Number |
06670196
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
米澤 傑 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (10175002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 栄一 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60004579)
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Keywords | ムチン抗原 / 免疫組織学 / in situ hybridization / 膵癌 / 肝癌 / 乳癌 / 胃癌 / 癌患者の予後 |
Research Abstract |
ムチン抗原の発現が癌の生物学的特性に及ぼす影響についてはまだ不明な点が多いが、我々は、膵癌や肝癌におけるムチンコア蛋白(MUCI・MUC2)発現の免疫組織学的研究で、浸潤性に発育し予後の悪い浸潤性膵管癌や胆管細胞癌がMUCI(+)・MUC2(-)であるのに対し、膨張性に発育し予後の良い膵乳頭腫瘍、肝嚢胞腺癌はMUCI(-)・MUC2(+)であることを報告してきた。今年度新たに得られた研究成果は以下のごとくである。 1.乳癌におけるムチンコア蛋白の発現を検索し、浸潤性乳管癌が常にMUCI(+)・MUC2(-)であるのに対し、リンパ節転移率が低く予後が良い粘液癌は、MUCI(+)であるものの、MUC2も(+)であることを明らかにした。分泌型糖蛋白であるMUC2ムチンの発現が、粘液を多量に産生する膵乳頭腫瘍、肝嚢胞腺癌、乳腺粘液癌という特殊な形態を形成して、その生物学的底悪性度と関連すると推察される。 2.さらに、MUC2のcDNAプローブを用いたin situ hybridizationによってMUC2遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)の局在を検索し、免疫組織学的所見と相互比較を行ったところ、MUC2コア蛋白(-)である膵や肝の浸潤性癌ではMUC2mRNAも(-)であったのに対し、MUC2コア蛋白(+)である膵や肝の膨張性癌ならびに乳腺粘液癌ではMUC2mRNAも(+)という結果を得、MUC2コア蛋白の発現はMUC2mRNAの発現と一致していた。上述にように癌患者の予後に影響を及ぼすMUC2ムチンの発現はmRNAのレベルで制御されているようである。 3.ヒト胃癌におけるムチン抗原発現の免疫組織学的研究で、印環細胞癌においては、MUC1ムチン(乳腺型)はほとんど発現しないが、胃の腸上皮化生粘膜にみられるMUC2ムチン(腸型)とシアリルTn抗原が高率に発現し「細胞内腸上皮化生」ともいえる興味ある所見が得られた。一方、低分化腺癌においては、MUC1ムチンの発現がリンパ節転移陰性例よりもリンパ節転移陽性例で有意に高く、癌患者の予後に影響を及ぼしている可能性が示された。
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[Publications] Yonezawa,S.: "Application of immunohistochemistry for diagnosis of neoplasms:Mucin antigens expression and biological behavior of neoplasms" Acta Histochemica et Cytochemica. (印刷中). (1995)
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[Publications] Nomoto,M.,Yonezawa,S.他: "Mucin antigens expression and ki-67 labeling in breast cancer:Peculiarity in scirrhous carcioma" Pathology International. (印刷中). (1995)
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[Publications] Yonezawa,S.,Nomoto,M.他: "Difference in the expression of apomucins (MUC1 and MUC2) by micinous carcinoma and invasive ductal carcinoma of breast" Scientific Proceedings,86th AACR. (印刷中). (1995)
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[Publications] 米澤 傑: "大腸癌と腫瘍マーカー" 病理と臨床. (印刷中). (1995)
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[Publications] Utsunomiya,T.,Yonezawa,S.: "Expression of MUC1 gene product and lymph node metastasis in gastric carcinomas" Proceedings of 1st International Gastric Cancer Congress. (印刷中). (1995)
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[Publications] Sakamoto,H.,Yonezawa,S.: "Expression of mucin core protein antigens in gastric carcinoma of the young adults and elder persons" Proceedings of 1st International Gastric Cancer Congress. (印刷中). (1995)