非小細胞性肺癌の抗癌剤多剤耐性獲得機構の分子病理学的解析

1995 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06670206
• Research Institution: Tokai University
• Principal Investigator: 中村 雅登 東海大学, 医学部, 講師 (00164335)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山崎 等 東海大学, 医学部, 講師 (20191273) ; 玉置 憲一 東海大学, 医学部, 教授 (50055860)
• Keywords: 肺癌 / 抗癌剤多剤耐性 / MDR1遺伝子 / MRP遺伝子 / 分子病理学 / 多剤耐性克服

Research Abstract

前年度の研究でNSCLCの抗癌剤多剤耐性機構におけるMDRI/P-Gpの役割を中心として解析し、MDR1遺伝子の発現増強が肺腺癌の抗癌剤多耐性現象に関連していることを明らかにした(Y. Abe, M. Nakamura et al., 1994)。さらに、ヒトNSCLC-Xenograft株を用いたin vivo化学療法実験により、多剤耐性肺腺癌xenograft株LC-6Rの獲得多剤耐性現象へのMDR1遺伝子発現増強の関与を報告してきた(Y. Abe, M. Nakamura et al., 1993)。NSCLCの多くはMDR1遺伝子の過剰発現以外の機序によって抗癌剤多剤耐性となっている可能性が高く、本年度はNSCLCの耐性現象に関与するP-Gp/MDR1遺伝子以外の分子の関与も検討した。【材料および方法】A.ヒトNSCLC手術材料104例を対象とした。B. MDR related protein (MRP)遺伝子発現レベル: MRP遺伝子の発現はノーザンプロット法によって解析した。MRP遺伝子の発現レベルはオートラディオグラフィーのMRPシグナルをデンシトメトリーによって定量し、内在性遺伝子β-actin発現レベルと比較することによって判定した。C.術後化学療法は患者年齢、組織型、病期分類によって決定された。対象症例では術前化学療法は行っていない。対象症例104例のうち61例について2種類のプロトコールで術後化学療法が行われた【結果】A. NSCLC症例104例中33例(31.7%)にMRP遺伝子発現が認められた。MRP遺伝子の発現レベルは症例によって多様であったが、MRP遺伝子発現が強く認められたのは扁平上皮癌症例で有意に多かった。さらに、MRP発現(++)/MDR1発現(-)のNSCLC症例では扁平上皮癌が多いのに対して、MRP発現(-)/MDR1発現(+)のNSCLCでは腺癌が有意に多かった。B. MRP遺伝子発現陽性例は陰性例より有意に生存率が低かった。【考察】NSCLC(ことに扁平上皮癌)では、MDR1遺伝子発現レベルよりもむしろMDR related protein (MRP)遺伝子発現レベルがその抗癌剤多剤耐性現象に関連している可能性が示唆された。MRP過剰発現をしていたNSCLC症例はMRP遺伝子の発現を認めなかった症例に比べて有意に予後が悪かった。NSCLC症例とMDR1遺伝子の過剰発現には明らかな関連は認めなかった点と考え合わせると、NSCLCの抗癌剤多剤耐性現象には、むしろ、MRP遺伝子の発現レベルが重要なことが示唆された。今後は選択的にMDR1およびMRP-mRNAを直接分子標的とするような分子治療法の開発がNSCLCを含むがんの抗癌剤多剤耐性の克服に応用されるのが期待される。

Research Products

• [Publications] Yoshiyuki Abe, Massato Nakamura, et al.: ""Expression of the multidrug resistance gene (MDR1) in non-small cell lung cancer"" Jpnanese Journal of Cancer Research. 85. 536-541 (1994)
• [Publications] Takashi Imanish, Masato Nakamura, et al.: ""Expression of the human multidrug resistance gene (MDR1) and prognostic correlation in human osteogenic sarcoma"" Tokai Journal of Experimental Clin. ical Medicine. 19. 39-46 (1994)
• [Publications] Yoshimi Tanaka, Masato Nakamura, et al.: ""Ultrastructural localization of P-glycoprotein on capillary endothelial cells in human gliomas"" Virchowa Archiv. 425. 133-138 (1994)
• [Publications] Yoshiyuki Abe, Masato Nakamura, et al.: ""Multidrug resistance gene(MDR1) Expresseion in human tumor xenofragts"" International Journal of Oncology. 5. 1285-1292 (1994)
• [Publications] Hiroshi Kijima, Masato Nakamura, et al.: ""Stability of ras oncogene mutation in the human tumor xenografts through serial passages"" Anticancer Research. 14. 2583-2588 (1994)
• [Publications] Eiichiro Ota, Yoshiyuki Abe. Massato Nakamura, et al.: ""Expression of the multidrug resistance-associated protein (MRP) gene in non-small cell lung cancer"" British Journal of Cancer. 72. 550-554 (1995)