1995 Fiscal Year Annual Research Report
増殖因子による標的細胞での変異原・癌原物質に対する感受性亢進の機序
Project/Area Number |
06670229
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Research Institution | Ehime University School of Medicine |
Principal Investigator |
植田 規史 愛媛大学, 医学部, 教授 (30030886)
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Keywords | 染色体切断 / 姉妹染色分体交換 / 細胞増殖因子 / DNA修復 / 変異原・癌原物質 |
Research Abstract |
骨髄増殖刺戟下での骨髄細胞における変異原・癌原物質による染色体切断(CA)頻度は著明に増加し、逆に骨髄増殖抑制刺激下ではCA頻度は減少することが明らかとなった。多血により骨髄抑制を行ったラットでもエリスロポイエチンのような骨髄刺激物質を投与するとCA頻度は貧血にした骨髄増殖刺激ラットと同じ頻度を示した。この事実は、増殖刺戟を受けている標的細胞では変異原・癌原物質によりCAが増加することを示している。染色体内分布では、No.1染色体で動原体からの相対距離で40%の部位に、No.2染色体では30%、55%、80%の部位というふうにCAは特定の部位に集中し、この集中部位のpeakの出現は増殖刺戟がある場合により強く現れ、増殖抑制がある場合には逆に抑制されpeakの出現は明らかでなかった。変異原・癌原物質による姉妹染色分体交換はラット骨髄細胞、肝細胞及び線維芽細胞を用い、それぞれEP、肝細胞増殖因子(LGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)存在下で標的となる細胞についてin vivo及びin vitroで検索した。いずれの実験系においても、細胞増殖因子による刺戟下では姉妹染色分体交換(SCE)頻度は著明に上昇し、増殖抑制があるとSCE頻度は減少した。SCEの染色体内での発生部位分布では、CAの好発部位と同一で、No.1染色体では40%の部位に、No.2染色体では30%、55%、80%の部位にSCEが頻発した。老齢ラットでは変異原・癌原物質による骨髄細胞のCAの発生頻度が若年ラットに比べ高くなるが、あらかじめ低レベルの放射線の全身照射を2回行っておくとCAの頻度は減少した。CAとSCEは増殖ないし抑制刺戟により同様の変化を示す事が明らかとなり、これらは関連した現象である事が推察される。そして、増殖中の細胞ではヒストンないし非ヒストン蛋白で防備されたDNAが無防備の状態になっている可能性を示し、外界からの変異刺激に対して感受性が高まることが推測された。低レベルの放射線で細胞の再活性化をおこなうとCA頻度は低下することから、さらにDNA修復機構もこの現象に関与していることが推定される。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] S.Akehi et al.: "Immunohistochemical detection of Truncated APC protein in sporadic human colorectal adenomas and adenocarcinoma." Virchow Arch (in press).
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[Publications] A.Sugita et al.: "血管増殖阻害物質と腫瘍増殖について" Ehime Med J. 14. 313-317 (1995)
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[Publications] S.Akehi et al.: "DDRT-PCR法による前立腺癌および乳癌培養細胞中の増殖・分化に特異な遺伝子発現の解析" 第54回日本癌学会総会記事. 54. 199 (1995)
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[Publications] T.Matsumoto et al.: "ヒト培養癌細胞における増殖関連S100遺伝子群(CACY,CAPL,p11)の発現調節" 第54回日本癌学会総会記事. 54. 399 (1995)
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[Publications] M.Ohsaka et al.: "ラットDMBA赤白血病におけるN-ras遺伝子の変異" 日本病理学会会誌. 84. 142 (1995)
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[Publications] M.Tachibana et al.: "DMBA誘発ラット白血病細胞株のアポトーシス誘導におけるp53遺伝子の関与" 日本病理学会会誌. 84. 173 (1995)
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[Publications] 植田規史: "染色体・遺伝子および発生の異常" 標準病理学 町並陸生編 医学書院 (印刷中),