1994 Fiscal Year Annual Research Report
腸球菌(E.faecium)の新たな機構による高頻度接合伝達性プラスミドの研究
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06670283
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
池 康嘉 群馬大学, 医学部, 教授 (60125820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷本 弘一 群馬大学, 医学部, 講師 (40188389)
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Keywords | 腸球菌 / E.faecium / プラスミド / 接合伝達 / 制限酵素地図 / Km,Gm耐性 |
Research Abstract |
現在までに知られている高頻度接合伝達性(液体培地中での接合伝達性)プラスミドの接合伝達機構には大きく2種類存在する。1つは腸内細菌を主としたグラム陰性桿菌におけるもので、これはプラスミドに特異的な性線毛で雌菌をとらえ接合に至る。他の1つはグラム陽性菌の腸球菌、E.faecalisのプラスミドで、これは雌菌の生産する性フェロモン(アミノ酸8個のペプチド)によりプラスミドを含む雄菌の接合可能状態(凝集物質生産)が誘導されることによるもので、グラム陽性菌では唯一の高頻度接合伝達性プラスミドである。 E.faeciumはE.faecalisと共に臨床分離頻度の高い腸球菌であるが、E.faecalisと異なり高頻度接合伝達性プラスミドの存在は証明されていなかった。E.faeciumには高度薬剤耐性や、プラスミドが存在することからE.faeciumにも高頻度接合伝達性プラスミドが存在する可能性を考え、これまで存在しなかったE.faeciumの受容菌(実験株)を新たに作成しこれを用いて臨床分離株を選択的に検索した結果、Km Gm高度耐性高頻度接合伝達性プラスミドpKG(80kb)(Km Gmプラスミド)を発見することができた。pKGはE.faecium【double arrow】E.faecium【double arrow】E.faecalis【double arrow】E.faecalisの間で接合伝達される。そしてpKGの接合伝達はE.faecalisのフェロモン(培養濾液)により誘導されないことが解った。プラスミドの分子遺伝学的研究では、制限酵素地図が必須であるが一般に50kb以上の大きいサイズのプラスミドの制限酵素地図の作製は困難である。pKG(80kb)を制限酵素(EcoRI)で部分切断し、クローニングを行い種々の連関クローンを分離し、pKGの制限酵素地図を作製した。E.faecalisのフェロモンに反応するプラスミドpAD1(58kb)とpKGとのDNA-DNAハイブリダイゼーションによりpAD1とpKGはハイブリダイゼイションしないことが解った。このことはpKGの接合伝達がフェロモンによる接合伝達機構とは異なる接合伝達機構によるものであることを示唆する。これらの結果を1994年度のアメリカ合衆国の微生物学会主催の国際レンサ球菌分子遺伝子学会で発表した。
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