1994 Fiscal Year Annual Research Report
リステリア菌の低温増殖能に関する分子遺伝学的研究1
Project/Area Number |
06670314
|
Research Institution | 国立公衆衛生院 |
Principal Investigator |
牧野 壮一 国立公衆衛生院, 衛生獣医学部, 室長 (30181621)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹川 千尋 東京大学医科学研究所, 細菌研究部, 助教授 (70114494)
|
Keywords | リステリア菌 / 低温増殖能 / 鞭毛 / 病原性 / 食品 |
Research Abstract |
食品の低温保存や流通の技術の発展に伴い、低温増殖能を持つリステリア菌による食品媒介感染症の増加が危惧されている。本菌の低温増殖能が食品汚染の主原因と考えられるので、その機構は細菌学的観点から興味深いと考えられる。そこで、リステリア菌の低温増殖能と食品汚染及び病原性の発現との関わり合いを分子レベルで検討した。具体的には、本菌の低温域における運動性と深い関わりのある鞭毛形成発現の温度調節機構を解析した (1)鞭毛特異的抗血清の作製:25℃以下の低温条件で培養したリステリア菌から鞭毛を粗精製し、鞭毛に特異的な抗血清を作製した。37℃培養菌にて吸収し、更に精製した。 (2)鞭毛形成に関与する遺伝子の同定及び解析:シャトルベクターを用いて、大腸菌内で作製されたリステリア菌染色体の全遺伝子ライブラリーの中から、免疫学的手法で抗鞭毛血清に陽性なクローンを選んだ。合計4種類のそれぞれ異なる遺伝子を同定した。これらは、DNA-DNAハイルリダイゼーションにより、それらは全て異なっていることが解かった。得られたクローンの構造解析(塩基配列、遺伝子産物の同定等)を行い、その内の一つは鞭毛形成の構造遺伝子であることが解かった。 (3)鞭毛形成の生物学的意義:リステリア菌の鞭毛の形成と温度の関係を人工培地中で調べた。特に、食品中での増殖が問題となるので、食塩濃度との関係を調べている。まだ、初期の結果であるが、鞭毛形成の至適温度は20℃近辺で、食品の保存温度(4〜10℃)では形成されなかった。このことは、間接又は直接的に低温でのリステリア菌の保存に鞭毛は関与していないことにな。また、食塩濃度と鞭毛形成についても、温度変化とほぼ一致しており、結果的に温度制御は複雑な調節系の存在が想定される。 (4)鞭毛非形成変異体の作製:遺伝学的手法により、鞭毛非形成変異株を作製し、食品中での増殖能や、低温発育能、マウスへの病原性等を親株と比較した。しかし、際だった差はいまのところ確認されておらず、現在、鞭毛形成の温度に対する脱抑制変異株を作製し、鞭毛と病原性について検討しているところである。
|