1994 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞侵入過程において新しく発現する赤痢菌遺伝子の分離および機能について
Project/Area Number |
06670315
|
Research Institution | 国立予防衛生研究所 |
Principal Investigator |
渡辺 治雄 国立予防衛生研究所, 細菌部, 部長 (70142130)
|
Keywords | 細胞侵入性 / 赤痢菌 / 発現調節 / virF / 外界環境 / pH |
Research Abstract |
赤痢菌が上皮細胞の中に侵入したときに発現する遺伝子を探す目的で、Tn5-lac(β-ガラクトシダーゼ)トランスポ-ソンによる変異株の作製をおこなった。用いたトランスポ-ソンは挿入された遺伝子と転写融合をおこすようになっているので、未知の遺伝子の発現状態をみることが出来る。D群赤痢菌にTn5-lacをもつ温度感受性プラスミドを形質転換させ、42度でカナマイシン耐性かつX-gal平板上で青いコロニーを作るものを選択した。その青いコロニーのうち、生体の内部と予想される条件下でのみ発現する(つまり青いコロニーになる)コロニーを選択した。まずは、赤痢菌は貧食胞のなかに一時的に存在するので、貧食胞の中の環境条件つまりpHの変化で発現の変わるものを選択した。その結果、酸性の条件下でのみ発現し、中性条件ではほとんど発現しないもの、および逆に酸性条件下ではほとんど発現しないが、中性条件下でよく発現がみられるものがとれた。後者について、Tn5-lacが挿入しているDNA領域をクローニングし、その塩基配列を決めたところ、侵入性遺伝子群の正の調節遺伝子virFにあたることが判明した。つまり、virFの遺伝子は外界のpHの変化に対応し発現が調節されていることが明らかになった。その他にvirGの遺伝子にTn5-lacが挿入しているものも分離されたが、これはvirGの発現がvirFに依存していることを考えあわせると理屈の合うデータであった。これらの結果から、Tn5-lacの系は、種種の条件下で発現の変化する遺伝子を分離するのに適する実験系であることが分かった。
|
-
[Publications] Nakajima,H,et.al.: "Degradution of a polymerase chain reaction (PCR) product by heat-stoble.DNase produced from Yevsinia enterocolitica." Microbiol.Immunol. 38. 153-156 (1994)
-
[Publications] Kura,F,et.al.: "Dipperence in growol permissiveness as to Legionella pnevmoplila between J774.1 murine macrophage-like cells JA-4 and LPS-resistant mutant LPS 1916" Infect.Immun.62. 5419-5423 (1994)
-
[Publications] 渡辺 治雄: "感染症診断法の新しい展開" Cuvvent concepts in infectious diceases. 13. 15-17 (1994)
-
[Publications] 小林 一寛,渡辺 治雄: "食品衛生におけるPCRの応用" 食品衛生研究. 44. 27-39 (1994)