1994 Fiscal Year Annual Research Report
アンチセンス・オリゴタクレオチドを用いた新しい消化器癌治療法の開発
Project/Area Number |
06670549
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永野 公一 大阪大学, 医学部, 助手 (60237542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 栄治 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
竹井 謙之 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
辻 晋吾 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
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Keywords | アンチセンス・オリゴタクレオチド / 消化器癌 / c-myc / bcl-2 / k-ras |
Research Abstract |
【背景と目的】近年の分子生物学の発展により、癌遺伝子や癌抑制遺伝子における異常の集積が発癌過程の本質であることが明らかにされた。そこで本研究で我々は、細胞内で特定遺伝子発現を抑制するアンチセンス・オリゴヌクレオチド(以下ODN)を用いて癌遺伝子発現を特異的に抑制することにより、新たな治療原理に基づく消化器癌治療法の開発が可能かどうかを検討した。【方法】用いた胃癌細胞株はMKN45細胞で、我々はこの細胞株でのc-myc、bcl-2遺伝子の発現を確認している。これら癌遺伝子の翻訳開始コドンを含む領域に相補的な配列をもつアンチセンス・ODNと、対照として用いたセンス・ODNをPhosphor othioate体にて作成した。また、K-ras遺伝子に点突然変異を有する大腸癌細胞株DLD-1を用いてK-rasアンチセンス・ODNの抗腫瘍効果の有無を合わせて検討した。【結果】c-mycおよびbc1-2アンチセンス・ODNは1-10μMの濃度でMKN45細胞の増殖をそれぞれ40-75%、49-75%抑制した。一方対照としたセンス・ODNはMKN45細胞の増殖を抑制しなかった。この抗腫瘍効果が特定の遺伝子発現の抑制に基づくものであるか否かをRT-PCR法、フローサイトメトリーを用いて検討した。その結果、c-mycアンチセンス・ODNはmRNAレベル、蛋白レベルの両方でc-myc遺伝子の発現を特異的に抑えることが確認された。また我々は、アンチセンス・ODNの抗腫瘍効果の一部にアポートシスの誘導が関与することをTUNEL(nick end labeling)法で確認している。さらにK-rasアンチセンス・ODNはDLD-1細胞(大腸癌)の増殖を最大60%抑制した。【結語】以上の結果から、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いて特定の癌遺伝子発現を抑えることにより、培養胃癌細胞の増殖を抑制できることが確認された。今後実験動物を用いてin vivoでの有効性を確認する必要がある。
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[Publications] Kobayashi I, Nagano K,et al: "Growth Inhibitim of colon cancer cell line by antisense oligonuclecotide to Ki-ras oncogene." Gastroenterology. 106. A404 (1994)
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[Publications] Nagano K,et al: "Growth inhibitim of a gastvic cancer cell line by antisense oligonucleotides to c-myc and bcl-2." Gastroenterology. 106. A419 (1994)
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[Publications] Michida T,et al: "Role of endcthelin-1 in hemonhagic shock-induced gastric mucosal injury in rats." Gastroenterology. 106. 988-993 (1994)
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[Publications] Masuda E,et al: "Endogenous nitric oxide modulates ethanol-induced gastric mucosal injury in rats." Gastroenterology. 108. 58-64 (1995)