筋萎縮性側索硬化症下位運動ニューロンの電顕的、免疫組織学的研究

1994 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06670679
• Research Institution: Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience
• Principal Investigator: 中野 今治 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経病理, 副参事研究員 (40092423)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 小田 雅也 東京都立神経病院, 検査科(神経病理), 神経研兼務研究員
• Keywords: 筋萎縮性側索硬化症 / 下位運動ニューロン / hyaline inclusion / skein-like inclusion / 電子顕微鏡

Research Abstract

ALSの下位運動ニューロンには様々の細胞質内封入体が出現するが、このうちskein-like inclusion(SLI)とhyaline inclusion(HI)はubiquitin化されている。我々は、SLIが一層あるいは複数層のcisternで囲まれていることを電顕的に見出し、この像はautolysosomeの初期像に酷似していることから、SLIの少なくとも一部はlysosomeで処理される可能性があることを以前に報告した。今年度は、SLIと同様にubiquitin化されているHIの処理にlysosomeが関与している可能性について電顕的に検索した。
症例は24例の古典型ALSである。剖検時脊髄前角を採取して4%glutaraldehydeあるいは10%formalinで固定し、型の如く処理して電顕観察した。HIを含むニューロンの一部では、モンタージュを作成し、lysosome-like profile(LLP)をmappingした。
7例においてHI含有ニューロンを見出し、1例につき1-3個認められた。HIはSLI線維と酷似した異常線維と神経細糸および顆粒状の構造が様々の割合で不規則に混交したものであった。SLIの束がHIから周辺の細胞質に伸びているように見える場合もあった。HIの周囲にはLLPが集簇して、HIを取り囲んでいる様に見える像が希ならず認められた。また、LLPが壊れたことを示唆する膜断片を周囲に伴うHIも認められた。これらのLLPや膜断片は、HIから離れた細胞質には希に見られるのみで、圧倒的にHIの周囲に多かった。
この様にHIもSLIと同様、その一部はlysosomeで処理される可能性が考えられる。HI周囲のLLPの数にはばらつきがあるが、その多寡を決める要因は今回の検索からは不明であった。

Research Products

• [Publications] 中野今治: "筋萎縮性側索硬化症--下位運動ニューロン病理の最近の知見" 医学のあゆみ. 168. 125-130 (1994)
• [Publications] 中野今治: "Bunina小体と神経症状" Dementia. 8. 34-41 (1994)
• [Publications] Yagishita A,Nakano I,Oda M,Hirano A: "Localization of the corticospinal tract in the internal capsule on MR imaging." Radiology. 191. 455-460 (1994)
• [Publications] Yamazaki M,Nakano I,Imazu O,Kaieda R,et al: "Astrocytic straight tubules in the brain of a patient with Pick's disease--Immunocytochemical and electron microscopic study" Acta Neuropathol. 88. 587-591 (1994)
• [Publications] 中野今治: "痴呆を伴う筋萎縮性側索硬化症" モダンフィジシャン. 14. 823-826 (1994)
• [Publications] 柳下章、中野今治: "皮質脊髄路と筋萎縮性側索硬化症-病理とMRI。" 病理と臨床. 12. 843-851 (1994)
• [Publications] Nakano I.Shibata T,Kuroda M,et al: "ALS-from Charcot to the present and into the future.(分担執筆)" Smith-Gordon, 14 (1994)