1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト心血管系臓器における環状ヌクレオチド分解酵素に関する研究
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06670710
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊藤 正明 三重大学, 医学部, 助手 (00223181)
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Keywords | ヒト大動脈 / ヒト血小板 / 環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ / 血管弛緩 / 血小板凝集 |
Research Abstract |
【目的】環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)は、細胞内情報伝達系において重要なセカンドメッセンジャーであるcAMPやcGMPの分解酵素である。このPDEには最低5種類のアイソザイムファミリーよりなると考えられているが、未だヒト臓器におけるPDEアイソザイムの分布に関する検討は詳細の行われていない。そこでヒト大動脈・血小板PDEアイソザイムの性状および細胞内局在を検討し、さらに血管拡張剤として臨床応用が検討されている薬剤のヒト心筋PDEアイソザイムに対する効果も検討した。【方法】Saekiらの方法に従い、PDEアイソザイムをDEAE‐Toyopearl 650Sを用いて、剖検より得られた大動脈の細胞質分画および膜分画ならびにヒト血小板より分離精製した。PDE活性は2ステップアッセイ法にて測定した。【結果】1)ヒト大動脈PDEアイソザイムは、細胞質分画にCa^<2+>‐calmodulin activated PDE(PDE1)、cGMP‐stimulated PDE(PDE2)、cGMP‐inhibited PDE(PDE3)、cAMP‐specific PDE(PDE4)及びcGMP‐specific PDE(PDE5)の5種類が認められたが膜分画にはPDE活性は認められなかった。ヒト血小板には、PDE2、PDE3、PDE5の3種のアイソザイムが存在していた。cGMPを分解するアイソザイムは、大動脈ではPDE5、PDE1、血小板ではPDE5、cAMPを分解するアイソザイムは大動脈ではPDE3、PDE4、血小板ではPDE3であった。2)新しい血管弛緩薬E4021は、ヒトPDE5の強力かつ選択的阻害剤であることが判明した。その阻害様式はcGMPに競合的で、そのKi値は2.4nMであった。E4021はprostaglandin F_<2α>によるヒト肺動脈の収縮を濃度依存性に阻害し、またthromboxane A_2のよる血小板凝集をSIN‐1との併用で阻害した。【結語】ヒト大動脈ならびに血小板には、心筋や腎と比較して、PDE5が多く発現されていることが特徴であった。PDE5阻害剤は、細胞内cGMPを上昇させ、血管拡張ならびに血小板凝集抑制作用を有するため、血管拡張剤ならびに血小板凝集抑制剤として臨床応用の可能性があると考えられた。
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