1994 Fiscal Year Annual Research Report
川崎病冠動脈後遺症における冠血液予備能評価に関する臨床的研究
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06670816
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
浜岡 建城 京都府立医科大学, 医学部, 助教授 (60189602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾内 善四郎 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (20079875)
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Keywords | 冠血流速 / 冠血流予備能 / 小児 / 川崎病 / Adenosine Tripharphate(ATP) / 発育 |
Research Abstract |
小児例での冠血流動態や冠血流予備能を評価する上において、安全で有効な負荷法を確立するため、まず、薬物学的に有用な末梢冠動脈拡張作用を有すると思われるATPの末梢冠動脈拡張能について、また、小児例において臨床応用上での至適投与量とその安全性を検討するために、ATP冠動脈内投与による冠血流速動態の変動をdoppler guide wireを用いて測定すると共に、全身血行動態および心電図上への影響を検討した。本研究のため、造影上冠動脈病変を有しない川崎病既往児30例(8.2±5.1歳、男児24例、女児6例)を対象として、ATPをそれぞれ0.01μg/kg,0.1μg/kg,1.0μg/kg冠動脈内に投与した。ATP投与により心拍数は増加し、収縮期血圧、平均血圧、拡張期血圧は低下した。これらの変化は一過性であり、かつ軽度であった。ATP投与前後での平均冠血流速はLAD,LCX,RCAのいずれにおいても優位の増加をみたが、ATP投与前後での平均血流速の比でみた冠血流予備能はLADおよびRCAに比してLCXにおいて明らかに低値であった。また、冠血流速の増加はdose-dependentの傾向がみられた。ATPに対する反応は一過性であり、効果のピークは投与10-20秒後にみられ、20-120秒後には前値に復した。ピークまでに要する時間と前値に復するまでの時間はdose-dependentに長くなった。2例においてATP(0.01μg/kg)投与後一過性に5秒以内の2度房室ブロックが出現したが、QTcの延長や、有意の不整脈の出現はみられなかった。以上から、ATPは薬物学的に冠血流予備能を評価する上では安全で有用な薬物であり、冠動脈内投与では0.01μg/kgが至適投与量と考えられた。 次に、冠動脈後遺症を認めないこれら30例のデータを解析し、小児期での冠血流動態の特徴を検討した。安静時での平均および最高血流速は左冠動脈に比して右冠動脈において低値であった。冠血流は拡張期に優位に流れていたが、右冠動脈では左冠動脈に比して相対的に収縮期成分優位の傾向がみられた。ATP投与により血流速の増加は収縮期での増加が優位であった。発育面からみると、年少児ほど平均血流速が高値をとる傾向がみられたほか、LAD,LCXでは年少児ほど冠血流予備能が低かった。以上の通り今回の検討により、doppler guide wireを用いて小児期での冠血流動態を検討したところ、各血管により冠血流速パターンや冠血流予備能にいくつかの点で差異がみられるほか、発育による特徴が見られることが明らかにされた。また、今後の小児例における冠動脈病変の機能的評価を行っていく上では、今回示された小児期での特徴を考慮にいれる必要がある点、更にdoppler guidewireを用いた冠血流速動態の検討が、小児においても、その冠動脈病変の局所的および機能的評価や冠血流動態の把握の上で極めて臨床的に有用なものであることが明らかにされた。
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