Research Abstract |
平成元年から平成6年の間に放射線療法を施行した食道癌24症例を対象として,変異型p53蛋白の発現と組織学的分化度,放射線治療成績の関連について検討した.変異型p53蛋白の発現は,p53癌抑制遺伝子の異常と相関するといわれており,ホルマリン固定後にパラフィン包埋された生検材料を用いて,免疫組織化学的染色を行った.抗p53モノクローナル抗体としては,DO-7(DAKO)を用いた. 【対象の内訳】年齢は,平均67歳(41〜83歳)で,男女比は18:6であった.占居部位は,Ce:3例,Iu:5例,Im:10例,Ei:6例で,X線型は表在型:1例,隆起型:3例,潰瘍限局型:2例,潰瘍侵潤型:18例であった.病期(食道疾患取扱い規約)は,I度:1例,II〜III度:6例,IV度:17例(71%)であった. 【評価法】免疫組織化学染色で,腫瘍細胞の50%以下が陽性であったものを1+,50%以上陽性であったものを2+,ほぼ100%陽性であったものを3+とした.組織学的分化度は,HE染色で評価した. 【結果】1)p53蛋白の発現度は,1+:3例,2+:6例,3+:9例で,陽性率は75%(18/24)であった.組織学的分化度と比較すると,分化度の低いもので,強陽性となる傾向がみられた. 2)治療成績は,陰性群〜1+群と2+群〜3+群とにわけて比較した.1年,5年生存率は,前者が40%,30%,後者が61%,27%と明らかな有意差は認められなかったが,中央値はそれぞれ,4か月,9か月で,2+群〜3+群で延長していた. 【まとめ】変異型p53蛋白の発現は,食道癌放射線治療における予後因子としては,組織学的分化度と同程度の因子であろうと推測された.癌抑制遺伝子の異常については,現在検討中である.
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