1994 Fiscal Year Annual Research Report
lgA腎症の発症の病因解明に関する研究(Haemophilus parainfluenzae抗原および抗体の関与について)
Project/Area Number |
06671135
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 亨 新潟大学, 医学部, 助手 (00206484)
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Keywords | IgA腎症 / Haemophilus parainfluenzae / polyclonal activation / IgA class switch / outer membrane |
Research Abstract |
本研究では、IgA腎症の発症の病因として、Haemophilus parainfluenzae(HP)の外膜成分に対するlgA型免疫複合体に焦点を絞り、本症患者血清中の抗HP抗体の性状およびその抗体価と腎組織病変との関係を解明することを目的とし、研究を遂行した。そのため、研究実施計画に沿って、IgA腎症44例と他の糸球体疾患39例において、HPの外観の構成成分を抗原として、ELISAによる患者血清中のHPに対するIgA,IgG,IgM型抗体を測定し、糸球体病変との関係を検討した結果、以下に示す新たな知見を得た。 1.HPに対するIgA型およびIgG型抗体価は、IgA腎症群では、他の糸球体疾患群に比して有意に高値を示した(p,0.0005、p,0.001)。また、IgM型抗体価も、IgA腎症群において高値であった。 2.IgA腎症群において、HPに対するIgA型とIgG型、IgA型とIgM型、およびIgG型とIgM型抗体価の間に、有意な相関を認めた(p<0.02、p<0.02、p<0.05)。一方、他の糸球体疾患群においては、HPに対するIgG型とIgM型の抗体値の間にのみ、有意な相関を認めた(p<0.05)。 3.抗HP抗体値が、血清中の免疫グロブリンの上昇につれて、非特異的に上昇を示しているのか、検討した結果、IgA腎症においては、血清IgA値とIgA型抗体値、および、血清IgG値とIgG型抗体値の関係では、有意な相関が認められなかった。一方、他の糸球体疾患群においては、血清IgG値とIgG型抗体値、および、血清IgM値とIgM型抗体値の関係では、有意な相関が認められた。 4.IgA腎症群においては、糸球体病変が高度なほど、IgA型抗HP抗体値は高値を示した。 以上より、IgA腎症患者は、HPの外膜抗原に対してpolyclonal activationを伴うIgAクラススイッチによる抗体産生系が活性化されており、特異的にIgA型抗HP抗体を産生することにより、HP抗原との免疫複合体を形成し、糸球体沈着を惹起することにより、IgA腎症の糸球体病変を引き起こすことが示唆される、との結論を得た。
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