1994 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内発育不全における病体の解明と治療法の開発に関する研究
Project/Area Number |
06671166
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三村 俊二 名古屋大学, 医学部, 助手 (30229794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 昌弘 名古屋大学, 医学部, 医員
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Keywords | 子宮内発育不全 / 神経芽細胞 / 遊走障害 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
子宮内発育不全(IUGR)モデルは、SDラットの母獣にthromboxane A2を持続的に投与する方法を用いた。妊娠20日に帝王切開にて胎仔を取り出し、その脳を以下の検討に供した。 1)糖・エネルギー代謝:IUGRの脳では、タンパク及びRNAの脳あたりの総量の減少がみられ、蛋白合成の低下が認められた。一方、前脳及び脳幹部の総DNA量は予想に反しIUGR脳で有意に増加しており、何等かの細胞増殖機転が作用していることが明らかになった。また、糖代謝の基質の減少にもかかわらず高エネルギーリン酸化合物により示されるエネルギー代謝状態には有意な差は認められず代謝範囲内にあることが示された。 2)組織学的検討:型どうりに組織標本を作成し、HE染色により前脳を中心に大脳の組織学的検討を行った。IUGRラット脳では対照と比べ大脳半球の断面積、特に皮質原基、大脳基底核の断面積が小さく神経上皮層が厚く皮質原基が菲薄で神経細胞の遊走遅延が示された。従来の報告にはみられない新たな知見として、大脳の旧皮質層と隣接する新皮質層部の神経上皮細胞群の局所的な分化、増殖像が観察され、神経芽細胞の分化異常、遊走障害と考えられた。なお、大脳基底核の構築異常、細胞の変性は認められなかった。この病変部位の分化の時期と母獣へのthromboxane A2投与時期とは一致しており、大脳皮質形成期における胎盤血流の著しい低下は神経芽細胞の分化構築異常をもたらすことが示唆された。このことは、妊娠中期発症の重症妊娠中毒症の母体から出生した患児の精神発達遅延の機構を解明する上に極めて重要な新知見である。平成7年度は、分化異常を示した細胞群の性格と出生後の消長を検討する予定である。
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