1995 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内発育不全における病態の解明と治療法の開発に関する研究
Project/Area Number |
06671166
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三村 俊二 名古屋大学, 医学部, 助手 (30229794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 昌弘 名古屋大学, 医学部, 医員
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Keywords | 子宮内発育不全 / 妊娠中毒症 / 中枢神経障害 / 糖代謝 / エネルギー代謝 / 遊走障害 |
Research Abstract |
Thromboxane A_2の持続的投与によるIUGRモデルラットを用いて,胎仔と新生仔の脳の組織学的変化について検討した.本モデルの胎児期や生後の発育不全の様式は妊娠中基発症の重症IUGRに類似しており,胎齢20日において体重および脳皮質の重量はそれぞれ20-30%,10-15%の減少が認められる. 胎齢18日の脳では,IUGRと対照の大脳半球の総断面積は明らかな差は認めなかった.大脳半球では,皮質原基の一部に神経上皮層を構成する細胞と類似した細胞群が認められた. 胎齢20日の脳では,大脳半球の総断面積を比較するとIUGRで有意な減少が認められた.また皮質原基,視床の断面積もIUGRでは減少していたが,総断面積比において皮質原基の占める割合の減少がIUGRで特徴的であった.組織所見では,旧皮質と隣接する新皮質部の神経上皮層に皮質原基を構成する細胞と類似した比較的分化した細胞集団が見られたが,細胞配列も乱れており,神経芽細胞の分化異常,遊走障害と考えられた.視床,視床下部においては細胞構築の異常は認められず,細胞変性などの所見も認められなかった. 日齢7の脳では,IUGRの脳で総断面積が小さく,また皮質も対照に比して非薄化していた.また,胎齢18日と20日に認められた異所性の細胞集団は消失していた. 以上の所見は、母獣へのthromboxane A_2の投与時期と病変部位の分化時期とがほぼ一致していることから,胎盤血流の著しい低下が一過性に大脳皮質の構築異常をもたらす可能性が示唆された.本研究によりIUGRにおける中枢神経系障害の機序に関わる基本的な問題が明らかになったので,今後さらに脳の発達障害という観点から分子生物学的に検討していきたい.
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