1995 Fiscal Year Annual Research Report
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06671171
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
湯浅 茂樹 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (70127596)
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Keywords | 小脳発生 / Bergmannグリア / アストログリア / tenascin / GFAP / bromodeoxyuridine / プルキンエ細胞 / リーラーミュータントマウス |
Research Abstract |
中枢神経系の皮質層構造形成過程において、放射状グリアならびに幼若アストログリアは神経細胞配列の位置情報の呈示に関与し、アストログリアの発生機構は小脳皮質形成障害と密接な関連を持つと考えられる。 本研究では、幼若アストログリアに特異的に発現する遺伝子を指標として、小脳皮質Bergmennグリアの発生様式と小脳アストログリアの発生・分化との関連を検討した。そして、この所見をもとに、遺伝的皮質形成障害を示すリ-ラミュータントマウスの小脳皮質形成過程におけるニューロン-グリア相関について形態学的解析を行った。 1.Bergmannグリアの発生機構:細胞外基質接着因子tenascinが胎生期放射状グリアならびに幼若アストログリアに発現することから、小脳Bergmannグリア発生の早期過程をtenascin遺伝子発現を指標としてin situ hybridization、免疫組織化学により形態学的に検討した。tenascin免疫陽性の胎生期放射状グリアはプルキンエ細胞の皮質への移動をガイドしたのち突起を短縮した。これと同時に、tenascin遺伝子を発現した細胞体は皮質へと放射状に移動しプルキンエ細胞層に配列した。これらの細胞は、tenascin in situ hybridizationとアストログリア マーカーであるglial fibrillary acidic protein(GFAP)免疫染色の2重標識によりBergmannグリアに分化することが明らかになった。また、新生仔期Bergmannグリアは分裂能を示し、皮質アストログリアの発生中心を形成すると考えられた。 2.リーラーミュータントマウス小脳におけるニューロン-グリア相関:プルキンエ細胞に特異的に発現する遺伝子L7のin situ hybridizationによりその配列を観察すると、正常発生過程では皮質に分布するプルキンエ細胞は分節状を呈した。これに対し、リーラーでは生後においても皮質下に分節状の集塊を形成していた。 tenascin遺伝子を発現したBergmannグリアは皮質に分布するが、その突起の形態は形成異常を示した。 さらに、GFAP陽性のアストログリアは内側のプルキンエ細胞集塊内には認められるが、外側の集塊内には認められなかった。 以上の所見から、Bergmannグリアは小脳発生において放射状グリアに起源を有し、プルキンエ細胞の皮質への配列過程の制御に関与するとともに、アストログリアの分化はプルキンエ細胞との相互作用に依存する可能性が示された。したがって、リーラー小脳皮質形成障害はニューロン-グリアの細胞間相互作用の異常に起因することが強く示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Yuasa,S.: "Neuron-glia interrelations during migration of Purkinje cells in the mouse embryonic cerebellum." International Journal of Developmental Neuroscience. in press. (1996)
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[Publications] Yuasa,S.: "Bergmann glial development in tBergmann glial development in he mouse cerebellum as revealed by tenascin expression." Anatomy and Embryology. in press. (1996)
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[Publications] 湯浅茂樹: "未梢神経再生におけるNGF産生と細胞接着因子tenascin発現の相関" 未梢神経. 印刷中. (1996)
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[Publications] 湯浅茂樹: "小脳系神経回路の発生機構" 日本神経精神薬理学雑誌. 15. 177-183 (1995)
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[Publications] 湯浅茂樹: "海馬発生における神経細胞移動とグリアの分化" 神経研究の進歩. 39. 801-813 (1995)
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[Publications] 吉野薫: "生後発達期および成体マウスの脳内へ移植された不死化神経細胞株V1の移動、分化と宿主神経構築への統合" 脳と神経. 47. 1149-1157 (1995)
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[Publications] 川野仁: "ドーパミンニューロンの移動と接着因子:神経組織の再生と機能再建" 西村書店(印刷中),