1995 Fiscal Year Annual Research Report
術者への電気メス分流成分の発生機序解明とその傷害対策に関する研究
Project/Area Number |
06671174
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 北海道大学, 医学部・附属病院, 助教授 (70205946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 純一 北海道大学, 医学部, 教授 (40000989)
和田 龍彦 北海道大学, 医療技術短期大学部, 教授 (90002112)
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Keywords | 電気メス熱傷 / スプレー凝固 / 高周波電流による破壊損傷 |
Research Abstract |
手術中に突然発生する電撃ショックと熱傷、及び関連する電気的な異常状況を解析し、その対策を検討した。 平成6年度:手術用手袋のゴム厚はマイクロメーター測定すると約0.2mm前後であった。インピーダンスは発振周波数100KHzで1cm^2あたり100Kオーム以上であるが、500KHz、で把持面を10cm^2と仮定すると数100Kオームに低下した。 平成7年度:ピンポイント凝固モードで30Wから70Wへと徐々に出力を増加させると、縦軸の振幅(電圧値)が増加し、最大出力電圧が約3,000Vで頭打ちとなった。同モードでピンセットを介しパチパチとスパークを起こすと電圧値は最大6,000Vに上昇したが、この状況でもゴムに穴は開なかった。 しかし、スプレーモードでは60W約5,000Vの出力で、通電約2秒後に発煙と同時に手袋資料に穴が開いた。穴が開くものはおおよそ54-55W程度からみられたが、製品によってゴムの厚さが若干不均一なものがあって薄い製品では、より低出力で穴が開く傾向であった。また、ゴムにペーストを塗ったり、電極の凸部分をあてると低出力電圧でも穴が開いた。以上より、電気メス通常使用時のスプレー凝固において、手術用手袋の絶縁破壊が容易に発生しうることが判明した。その後、手術用手袋下熱傷に及ぼす直流電圧の単独の影響を検討したが、天然ゴムでは1/10(10%)のみが9,000Vの高電圧で絶縁破壊をきたしたが、ラテックスゴムでは3/10(30%)が5,000Vまでに破壊された。合成ゴム手袋は高電圧による絶縁破壊を考慮する必要があると思われた。 以上の成績から、電気メス使用時の手袋破壊要因は高電圧が主因を占めるものではなく、低インピーダンス化による電流性の関与が中心と考えられた。実際の手術現場では鉗子や鑷子を握るためにインピーダンスは一層低下して、高周波電流は容易に手袋を通過するようになる。また、同様に手袋に血液や洗浄液が付着したり、手袋ゴムの進展によってもインピーダンスはより低下するので、この絶縁破壊による熱傷はより容易に発生しやすいこととなる。 したがって、手袋下熱傷の防止にはスプレーモード使用の適応に注意を払い、鉗子や鑷子の絶縁コーティングを行って高周波リ-ケージを防ぎ、また、電気メスの周波数、電力の低減化を工夫する必要があると判明した。
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[Publications] 佐藤直樹: "電気メスによる手術用手袋下熱傷の実験的検討" 日本手術医学会雑誌. 15. 106-109 (1994)
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[Publications] 佐藤直樹: "手術用手袋下皮膚の電気メス熱傷に関する研究" 日本手術医学会雑誌. 15. 463-467 (1994)
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[Publications] 佐藤直樹: "手術用手袋下熱傷に及ぼす直流成分の影響について" 日本手術医学会雑誌. 16. 233-234 (1995)
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[Publications] 佐藤直樹: "電気メス熱傷の原因と対策" 薬理と臨床. 5. 1283-1286 (1995)