1995 Fiscal Year Annual Research Report
成長ホルモン,IGF‐1による多蔵器不全の予防と治療
Project/Area Number |
06671182
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Research Institution | The first department of surgery, Chiba University School |
Principal Investigator |
田代 亜彦 千葉大学, 医学部, 講師 (70143310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 一也 千葉大学, 医学部, 助手 (80251164)
山森 秀夫 千葉大学, 医学部, 講師 (00166836)
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Keywords | 成長ホルモン / Insulin‐like cprowth factor‐1 / franslocation of gat / MOF / 細胞性免疫 |
Research Abstract |
成長ホルモン及びInsulin‐like growth factor 1(IGF‐1)はともに強い蛋白同化作用を有し、侵襲下でも蛋白代謝を改善することをこれまで報告してきたが、さらに分子生物学的手法を用いて、骨格筋、呼吸筋、内臓蛋白としての肝臓や分泌蛋白のアルブミンなどの合成能に及ぼす効果を検討した。次いで重症患者の病態の憎悪因子である腸粘膜のtranslocationや免疫能の低下に対する成長因子の効果について検討し、重症患者やMOF患者に対する臨床応用の可能性を検討した。 呼吸筋である横隔膜筋肉の構造蛋白myosin heavy‐chain、myosin light‐chain、troponin‐T、β‐actinは、成長ホルモン、IGF‐1投与によりそのmRNAの発現が増加したが、骨格筋の構造蛋白は変化しなかった。アルブミンのmRNAは増加したが、肝臓の構造蛋白のmRNAは変化しなかった。呼吸筋の増強効果は重症患者の憎悪因子の最大のものである肺感染症や呼吸不全を抑制し、またアルブミンの合成増加は体液の環境を整えるとともに、同時に産生されるであろう急性相蛋白などの働きにより、病態からの回復の点でも有用と思われる。 成長因子、特にIGF‐1は侵襲下における腸粘膜の委縮を著名に抑制する。このとき肝臓及び脾臓のエンドトキシンを定量してみると、IGF‐1投与により有意に減少した。即ちIGF‐1は熱傷ラットにおけるエンドトキシンのtranslocationを抑制した。腸粘膜のIgAのmRNAの発現はIGF‐1投与により変わらないことより、translocationの抑制は腸粘膜の構築が維持されるためと思われた。Translocationは重症化の一要因として重要と思われ、ここでもIGF‐1の有用性が示された。 侵襲下では細胞性免疫は著明に低下し、感染性合併症発生の温床となり、重症化を加速する大きな要因である。成長ホルモンもIGF‐1も、熱傷ラットにおけるDinitorofluorobenzene感作後の耳殻腫大率を有意に増加させ、細胞性免疫の著名な賦活作用を認めた。この事実は感染の予防ばかりでなく、治療にも臨床応用できる可能性をもつと思われる。 以上、これまで重症患者やMOF患者に対する臨床応用の可能性を支持する多くの証左を得ることが出来た。今後食道癌患者の術後やMOF患者などへの臨床応用例を増やして、種々の臨床効果-合併症発生率、人工呼吸器装着期間、創治癒、救命率などについて検討を続けたい。
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[Publications] Kazuya Takagi,et al: "Recombinant human qrnoth hormone and prAein metabolism of burned rats and esophagectomized patients" Nutrition. 11. 22-26 (1995)
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[Publications] 杉浦敏之,田代亜彦ほか: "熱傷ラットにおけるIGF‐1の腸管萎縮防止効果について" 日本外科感染症研究. 7. 75-79 (1995)
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[Publications] 杉浦敏之,田代亜彦ほか: "横隔膜および骨格筋における構造蛋白のmRNA発現に対するヒト成長ホルモンの効果について" 外科と代謝・栄養. 29. 151-156 (1995)
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[Publications] 杉浦敏之,田代亜彦ほか: "熱傷ラット肝臓におけるアルスミン遺伝子発現に対するヒト成長ホルモンの効果" 外科と代謝・栄養. 29. 39-44 (1995)
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[Publications] 森嶋友一,田代亜彦,ほか: "外科侵襲下におけるIGF‐1の効果" 日本外科学会雑誌. 96. 72-79 (1995)
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[Publications] 森嶋友一,田代亜彦ほか: "ラット熱傷モデルにおけるIGF‐1の蛋白代謝改善効果" 外科と代謝・栄養. 27. 289-294 (1993)
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[Publications] Tsuguhiko Tashiro,et al: "Diseases of Esophagns" Springer-Verlag, Tokyo, 1017-1023 (1993)
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[Publications] 田代亜彦ほか: "消化器外科セミナー51" ヘルス出版, 229-240 (1993)