1996 Fiscal Year Annual Research Report
敗血症性ショックの病態における一酸化窒素(NO)の役割について
Project/Area Number |
06671199
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 裕 大阪大学, 医学部, 助手 (90252676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋津 岳士 大阪大学, 医学部, 講師 (50196474)
吉岡 敏治 大阪大学, 医学部, 助教授 (60127313)
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Keywords | 敗血症性ショック / 一酸化窒素 / サイトカイン / 虚血・再灌流障害 / 白血球 / 外傷 |
Research Abstract |
敗血症性ショック患者および重度外傷患者の血中NOの変化を評価するとともに、各サイトカイン(G-CSF、TMF、IL-6、IL-8)の経時的変化を測定し比較検討した。動物実験では、脳や骨格筋の虚血再灌流障害モデルを用いて局所の微小循環動態とNOの作用について検討するとともに、摘出灌流肺モデルを用いた急性肺障害時のNO吸入の効果についても検討した。(結果):敗血症性ショック患者15例および重度外傷患者19例について、血中NOの代謝産物であるNO_2^-、NO_3^-について測定した。その結果敗血症性ショック患者では全例経過中NO_2^-、NO_3^-は高値となることが明らかとなり、敗血症性ショック患者の血中では、大量のNOが産生されていることが示唆された。逆に出血性ショック患者では正常か、むしろ低下する傾向にあった。また血中G-CSF、TMF、IL-6、IL-8は、敗血症患者では増加しており、NOの誘導に関与することが示唆された。一方重度外傷患者では受傷3〜6時間にピークとなるが、以後正常に復することが明らかとなった。砂ネズミの全脳虚血・再灌流モデルでは、虚血後より局所でのNO_2^-の産生が増加することが判明した。さらにラット骨格筋の再灌流モデルでもNO_2^-の産生が亢進し、また同障害に白血球が関与することを明らかにした。ラット摘出灌流肺モデルでは、トロンボキサンΛ_2が肺動脈圧の上昇や肺血管の透過性亢進を引き起こすことが示唆された。この場合NOを吸入させることにより肺動脈圧の上昇が抑制され、同時に肺血管の透過性亢進による肺水腫が抑制された。(考察):敗血症患者においては、大量のNOが産生されていることが明らかとなり、サイトカインがNOの誘導に関与していることが示唆された。脳や骨格筋の虚血・再灌流モデルでのNOの局所での産生は、再灌流時の脳血管拡張の原因として考えられることが示唆された。また肺障害モデルでは、NOの吸入が肺動脈圧の上昇を抑制する作用ばかりか、直接肺血管の透過能をおさえる作用を持つ可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 吉岡敏治,他: "患者背景別にみた日和見感染症の病態と対応:熱傷患者にみられる感染症とその防止策" Infection Control. 3. 54-58 (1994)
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[Publications] 嶋津 岳士,他: "敗血症時の循環動態と酸素代謝" Surgery Frontier. 1. 61-67 (1994)
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[Publications] 田中 裕,他: "重度外傷時のgranulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)の変動について" 日本救急医学会雑誌. 6. 274-274 (1995)
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[Publications] 田中 裕,他: "急性肺障害における白血球(PMN)の役割について:PMNの肺内集積とメディエータの関与を中心に" 日本外傷学会雑誌. 9. 296-303 (1995)
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[Publications] Hiroshi Tanaka,et.al: "Changes in granulicyte colony-stimulating factor concentration in patients with tranmy and sepsis" J.Trauma. 40. 718-726 (1996)
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[Publications] 田中 裕,他: "エンドトキシン:新しい治療・診断・検査" 中野 昌康 ,小玉 正智, 327 (1995)