ヒト乳癌転移モデルにおける転移抑制物質・抗癌剤の浸潤・転移に与える影響の分析

1994 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06671233
• Research Institution: Kawasaki Medical School
• Principal Investigator: 紅林 淳一 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10248255)
• Keywords: 乳癌 / 転移 / 血管新生 / ヌードマウス / TNP-470 / UFT / IIF-2 / 画像解析

Research Abstract

ヒト乳癌培養細胞 MCF-7に血管新生促進因子の一つ FGF-4及びgenetic tagとして大腸菌lacZ遺伝子を導入したMKL-4細胞は,ヌードマウスに移植するとホルモン非依存性に急速増大する腫瘍を形成し,lacZ活性を利用した染色法によりリンパ節及び遠隔臓器転移を判定量的に検討することができる。この転移モデルを用い以下の研究成果が得られた。
1.リンパ節及び肺転移巣からのsublineの分離に成功し,リンパ節転移由来のMKL-4-L1細胞がヌードマウスにおいて,親株より増殖・転移能が亢進していることを示した。このsublineの生物学的特徴については現在検討中である。
2.血管新生抑制物質 TNP-470のMKL-4転移モデルにおける効果を血管新生,増殖,転移の3点から検討した。その結果,TNP-470 10mg/kgまたは50mg/kgの隔日,皮下投与により,用量依存性に新生血管数(抗第VIII因子抗体染色),増殖速度,転移の頻度や広がりが抑えられた。導入されたFGF-4の活性を制御することにより増殖・転移能が弱められたことは,乳癌の悪性転化時に血管新生抑制物質が有効であることを示しており,臨床的にも極めて興味深い。
3.代謝拮抗物質5-FUの誘導体であるUFTの効果も検討した。その結果,UFT10mg/kgまたは20mg/kgの連日,経口投与により,用量依存性に増殖速度,転移の頻度や広がりが抑えられた。また,腫瘍内の壊死巣の増大も認められた。しかし,その効果はTNP-470に比べるとやや劣り,また20mg/kg投与群ではマウス体重の減少が認められた。一方,腫瘍増殖の抑制が認められたマウスでは,明らかに転移が抑えられていることは興味深い。
4.癌細胞浸潤抑制物質 IIF-2を用いたpilot studyでは,in vivoでの浸潤能の低下作用(画像解析装置を用い分析)や増殖抑制効果をともなわない転移抑制効果が示されいおり,用量依存性などを現在検討している。
5.乳癌手術後の補助化学療法のモデルとして,このMKL-4転移モデルが使えるかどうか検討するため,細胞接種後一定期間をおいて腫瘍を切除し,転移巣がその後どのように変化していくかを現在検討中である。

Research Products

• [Publications] 紅林淳一: "MKL-4乳癌転移モデルの樹立と転移巣由来細胞株の分離" 乳癌の臨床. 9. 46-47 (1994)
• [Publications] 紅林淳一: "乳癌と増殖因子 -基礎研究から臨床応用まで-" 日本癌治療学会誌. 29. 919-929 (1994)
• [Publications] 紅林淳一: "ヒト癌の転移モデル" 外科治療. 71. 149-153 (1994)
• [Publications] Kern,F.G.: "Transfected MCF-7 cells as a model for breast cancer progrssion" Breast Cancer Res Treat. 31. 153-165 (1994)
• [Publications] Kurebayashi,J.: "Angiogenesis inhibitor O-(chloroacetyl-carbamoyl)fumagillol(TNP-470)inhibits the tumor angiogenesis,growth -----" Breast Cancer. 1. 109-115 (1994)
• [Publications] 紅林淳一: "MKL-4ヒト乳癌転移モデルにおけるテガフ-ル・ウラシル配合体(UFT)の腫瘍増殖および転移抑制効果" 癌と化学療法. (印刷予定).